三匹が行く
自分のせいで二人を危険に晒してしまったという気持ち。それだけだった。
(……ごめんな)
起こってしまったことを悔やんでも仕方ないとは分かっているけれど、それでもセンリはそう思わずにはいられなかった。
「んじゃ、行くかセンリ」
「終わったらスイランの酒場で一息つこうね」
いつもと変わらぬ口調で二人が声をかけてきた。
攻めるような様子も恐れも怯えも一切ない。
いつもの口調、いつもの笑顔。
そんな二人の態度に許されたような思いを抱いて、センリはこくりと頷いたのだった……
「何をしている、お前たち!」
その声が響いたのはどのくらいたった頃だったろうか?
最初のときにチヒロ達が一人倒した後、何とか二人倒したまでは覚えている。
だが、そろそろ体力的にも精神力的にも限界だった。
そんな中で新手が現れたかと身を硬くした三人だったが、それは違った。
そこにいたのは青い鎧姿の一団だった。鎧に刻まれた紋章が鮮やかに彼らの目に映る。二匹のドラゴンを意匠化した紋章……
「……スイラン国、テンプルナイツ……」
そう呟いたのはセンリだった。
「え!?」
驚いた声をあげるチヒロの横で、刺客たちも瞬間動きが止まる。
「もうばれたのか」
さすがに分が悪いと思ったのか退却しようと思った彼らだったが、しかしそれはかなわなかった。
刺客たちの動きが止まった瞬間、一団の中の三人が風のような素早さで剣を抜いた。
不意をつかれたせいだけではない。その動きはチヒロやセンリが感嘆するほど優雅で洗練されていて見事なものだった。
そして、三人はいとも簡単に残りの刺客たちを片付けたのだった。
「すっげー……」
「さすがテンプルナイツ」
ぽかんと口をあけて、ともすればそのまま拍手でもしそうな二人に、一団の中の一人が歩み寄ってきた。
彼はセンリの目の前で立ち止まると、地面に膝をついて礼をする。
後ろにいる他の面々も彼と同様の態度を示した。
「お迎えに上がりました、センリ王子……いえ、次期スイラン国王陛下」
「…………」
「危ない目にあわせてしまって申し訳ありませんでした。彼らの動向には注意を払っていたのですが……」
「ということは、俺の暗殺を図ったのはやっぱり身内か」
「……はい」
「そっか……誰かというのは、聞かない方がいいんだろうな」