三匹が行く
「そうして頂けると……」
「分かった」
そんな会話を終わらせた後、センリはゆっくりとチヒロ達の方を向いた。
「センリ……?」
自分の方を向いたセンリにチヒロは呆然と問い掛けを放ってくる。
「……お前が、王族? 次期スイラン国王……?」
そんなチヒロに対して、センリは苦笑気味にしかしあっさりとその言葉を肯定した。
「ああ。今までは第四王子だったからかなり気ままにやってたけど、一体何をとち狂ったか親父の奴が俺に王位を譲るって言い出したらしいぜ。それも正式発表だったらしいからな。晴れて俺はスイラン国次期王位継承者ってわけだ」
「…………」
そのセンリの言葉に、しばらくチヒロは何の反応も返さなかった。
(あー……やっぱ駄目かー……)
そんなチヒロの態度にセンリが諦めたような笑みを浮かべかけた時、彼に動きがあった。
「うっそだろー! お前が王族!? 何かの間違いじゃねーの!?」
「確かにセンリは王族らしく見えないけどねー」
「絶対何かの間違いだって! 同名とか、そっくりさんとか!」
「何とかして間違いだった事にしたいのは分かるけど、それだとテンプルナイツがここにいる理由にならないよ、チヒロ」
ぎゃんぎゃん言うチヒロと、のほほんとそれに答えるイジューイン。
以前と何ら変わる事のない二人の態度に、センリは思わず唖然としてしまう。
「……お前ら、変わんねーな」
昨晩あれだけ悩んだ自分は何だったのだろうか。
そんな思いがセンリの胸をよぎる。
対して、チヒロはあっけらかんと返してきた。
「何で変わんなきゃなんないんだよ」
「だって俺スイランの王子で……何か次期国王っておまけまでついてきたし、だから……」
「なーに言ってんだよ。センリはセンリだろ」
屈託なく答えるチヒロは、今まで通りのチヒロだった。
「そういえば、チヒロ」
「ん?」
「センリが次期国王ってことは、チヒロは彼を一生護るんだね」
「へ?」
「だってチヒロはいずれテンプルナイツになるんでしょ。テンプルナイツって王や王族を命をかけて護るんだよね」
にーっこりと笑ってそう言ったイジューインに対し、チヒロはハッと顔を上げた。どうやらそのことには今気がついたようだった。
空を見上げ、遠い目をしてチヒロはしみじみと言う。
「……テンプルナイツ……そんな夢もあったなあ」
バコッ!