三匹が行く
状況が掴めず唖然とするセンリの元に駆け寄ってきたのは……
「大丈夫だったか、センリ!」
「一人で六人を相手にする気だったの。ずいぶん無茶な事するね」
先ほどはぐれてしまったはずのチヒロとイジューインだった。
「お、お前ら何でここに!?」
思わず構えていた剣を下ろし、今の状況も忘れて問い掛けたセンリに、彼の前に立ったチヒロは血に濡れた剣を構えなおしながら答える。
「お前を探してたからに決まってんだろ!」
「気がついたらセンリの姿がないんだもん、心配したよ」
かたや怒った様子で、かたやいつも通りのほほんとした様子でセンリに話しかけてくる。
「……俺、先に行ってるもんだと思ってた……」
「うん。僕はその方がいいと思ったんだよ。でもチヒロがね……」
「だってこいつが何のトラブルにも巻き込まれてないはずないじゃんか!」
「って」
にっこり笑ってチヒロの言葉を肯定したイジューインに引きつった笑いを見せ、それからセンリはチヒロに食ってかかった。
「ちょっと待て、チヒロ! それは俺がいつもトラブルに巻き込まれてるみたいな言い方じゃないか!?」
「だってその通りじゃん」
「お前の方がトラブルに巻き込まれてる回数は多いはずだろ!!」
「え、何の事ー?」
しらじらしくすっとぼけるチヒロに、センリは思わず拳を固める。
しかしイジューインがそれを止めた。
「二人とも、今の現実、見えてるかな?」
「…………」
「…………」
少しの沈黙。
そして……
「よし、チヒロ。その件については後でゆっくりと話し合おうな」
そう言ってセンリは剣を構えなおした。その顔から先ほどまでの弱気な表情は消えていた。
「どうやら、いつものセンリに戻ったみたいだね」
にっこり笑って言ったイジューインにチヒロも黙って頷いた。
しかしそれはセンリには聞こえないほどのささやかな会話だった。
一方、二人の参入により気持ちが入れ替わったセンリは、真っ直ぐに刺客の方を向いて別の事を考えていた。
(……大きな貸しになりそうだな)
彼らと一緒でも生き残れるかどうか怪しかった。
先ほどは不意をついたから何とかなったが、相手は殺しのプロである。
しかも人数は自分たちの倍近くいるのだ。
しかし、センリの胸に諦めの気持ちはなかった。
あったのはただ申し訳なさ。