三匹が行く
自分の考えに思わず笑いが零れたのだ。多分今言ったうちのどれかが当たりだろうから。どれが本当かなんてこの際どうでもいいことだ。
(ま、仕方ないよな。片親しか血がつながってないんだから)
自分がもし彼らの立場だったらどうしただろうか? 疎ましく思ってやはり刺客をさしむけただろうか?
(……んな面倒くさいこときっとしないな)
駄目なら駄目でつぶれるまで見守るだけだ。それか、きっと正面きって勝負を挑むだろう。
たとえそれが今までの王宮の慣例に則ったものではないと分かりきっていても。
(自分に都合の悪いものをこっそり排除して、それで得たとしても嬉しくないだろうにな)
次いで、嘲るような笑みが思わず顔に浮かんだ。
そんなセンリの態度に周囲がざわめく。
どういう状況か分かっていないような態度のセンリだったが、しかし彼にはちゃんと分かっていた。
この状況がどれだけ自分に不利かということも、恐らくは助からないだろうということも。
(ま、仕方ないな)
彼にあったのは諦めの気持ち。
それから……
(やっぱ、話しておけばよかったかな……)
脳裏に浮かんだ二人の顔。
チヒロとイジューイン。三年間苦楽を共にした仲間。
薄い笑みを浮かべながらセンリは剣を抜いた。
途端に周囲の気配が色めき立つ。
ざわめきは潮が引くように消えていき、後に残ったのは静寂と緊張感と殺気が混合する空間。
センリは真っ直ぐ前を見据えたまま深く息を吸い、そしてゆっくりと吐き出した。
真剣勝負の前の精神統一の方法。
『こうすると周りがよく見えるようになるんだぜ』
二回目の勝負の時、そう教えてもらった。
プライドがあったから、彼の前では絶対にやらなかったけど。
(少しはまし、かな)
そうしてる間にもじりじりと殺気は迫ってくる。
周囲は完全に囲まれてしまっていた。
「……あいつら、俺が死んだら泣いてくれるかな?」
思わずそんな言葉が口から漏れた。
音になって耳に届いて初めて、センリは自分がそんな思いを持っていたことに気づいた。
(馬鹿だな、答えが返ってくるはずないのに……)
しかし……
「だーれが泣くかよ!」
「うん、チヒロも僕も泣くよ。きっと、ね」
そんな声と、そしてドカンという景気のいい爆発音がセンリの耳に届いた。
そしてそれに続いて聞こえた刺客の悲鳴。
「え……?」