三匹が行く
(このままもう一度旅に出るかなー、一人でも別に構わないし……)
そう思いながらもセンリの足はスイランへ向かっている。
このままとんずらしてしまうのは簡単だが、彼らはきっと心配するだろう。
だから、行かないわけにはいかなかった。
そんな思いでてくてくと森の中を歩いていたセンリは、ふと足を止めた。
(……五人……いや、六人か……?)
周囲の木々に隠れるようにして、恐らくは六人。
いずれも巧妙に姿を隠してはいたが、殺気が隠しきれていなかった。
(盗賊……じゃないな。殺気の度合いが違う)
金品狙いではない。だとしたら……
「誰の命で俺の命を狙う」
センリはハッキリと、声高にそう言い放った。
間違っていないとの妙な確信があった。
「これから死ぬ人間が知ってどうする」
「……俺を誰だか知っての行動だな」
「ああ。スイラン国次期国王、センリ王子」
いまだ姿を見せない刺客のその言葉に、センリは思わぬ衝撃を受ける。
「……次期、国王……?」
「知らないのか? 先日国王が触れを出した。次の王座は第四王子であるセンリに継がせる、と」
「!?」
初耳だった。そして驚愕もした。
三人の兄を差し置いて第四王子に王位を与える。
それが混乱と紛争を巻き起こす事になるだろうことくらい、自分にも想像がつくのに。
何かの間違いだと思いたかった。
だが、こうして刺客が来ている事が何よりの証拠だった。
現スイラン国王……父は、本気で自分を次代の国王にする気でいるのだ。
そして、それを兄たちは快く思っていない。
(ま、当然だな)
それは自分は王に相応しくないという烙印を暗に押されたようなものだ。
(……確かにあの兄貴たちはあんま王に相応しくないけどな……)
だからといって自分が向いているのかといえば、ハッキリと首を横に触れる。
……というか、向き不向きよりも、あんな堅苦しい仕事、出来れば遠慮したいというのが本音だ。
「で、お前たちに命が下ったわけだな。こんなことをしそうなのは……二番目の兄貴か? 一番目は体力馬鹿だから暗殺なんて考えないだろうし、三番目は知識だけだから暗殺なんて大それたこと考えないだろうしな。それとも兄貴たちの母親か? 彼女たちならそれくらいのこと平気でしそうだしな」
そう言った後、センリはくすくすと笑った。