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かいごさぶらい
かいごさぶらい
novelistID. 16488
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かいごさぶらい<上>続き(2)

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某月某日 「逆らわない」、「怒らない」、「大声を出さない(怒鳴らない)」、私は、この「三ない」を母の介護の基本としている。さらに、大切なのは、私が、何かをする時には「00してくるわな」、「00するわな」、「00しような」と、必ず声をかけるようにしていることだ。今宵も何度目かの母の声。

「おか~さん、おか~さん」

「どうした、寝られへんのんか?」

「ちがうねん、おかしぃ~、なってんねん」

「そんなことないよ、誰でも、歳いったら、なるんやから、何~んにも心配せんでえ~よっ!」

「そうか、にいちゃんも、はよ、ね~やっ!」

「うん、お袋ちゃんも寝よなっ!」

「どこでねるの~?」不安げな母の顔。

「こっちやで」

「ありがとう、よ~わかってんな」不安が一瞬にして消えた母の表情。

「お袋ちゃんのことやったら、何でもわかるよ!」

「かしこいな~、かぶしてっ!」

「かぶしたるから、風邪引いたらあかんで」掛け布団を、そ~っと。

「ごめんな~、にいちゃんばっかりにさして」(うん、え~顔してる、と安堵する私)。

「親子やんか、お袋ちゃん、当たり前やろう~!」

「そう、おもうてくれんのん、ありがとう」(育ててくれておー気にな~、お袋ちゃん!と私は何時も心の中で呟く)。私は、「三ない」を実践してから、母との絆が一層深まったと思っている。


    


     「こんなとこで、ねさしてもろ~て、ありがとうございます」

2005/5/30(月) 午後 0:39
某月某日 デイのない日曜日。親子二人きりだ。洗濯、掃除、炊事。寸暇の買い物、など、私が動くと母は決まって「なに、ばたばた、してんのんっ!」と聞く。私が動くと、少し、機嫌が悪くなる。日が暮れて就寝。

「もう、ねてよろしいか?」と、眠そうな母。

「うん、ゆっくり寝~や」と、母の居室へ連れていく。

「はい、お休みなさい」と、数分も経たないうちに、ゴソゴソ母の寝間から音がしたと思ったら、四つん這いで、隣のリビングで寝てる私の寝間へやって来た。

「にいちゃん、こんなとこで、ねてんの~?」

「そうや、お袋ちゃんの隣やで、心配せんと、寝~や」

「はい、わかりました、すぐ、ねます」と、四つん這いになって自分の寝間へ引き返す。

「ちゃんと、かぶりや、風邪引いたら大変やからなっ!」母が、和室(母の居室)とリビングの段差に躓かないよう確かめながら。

「うん、かぶってます、にいちゃん、ありがとう」

「はい、お休みやで~」その後、2、3度、母はこの、似たような行動を繰り返す。そして、似たような会話を私とやりとりする。

「ねましたか?」と、母が聞く。

「うん、もう寝るよ」と、私が応じる。

「わたしも、ねます」と母。数回はこんなやりとりを、母と私は繰り返すのだ。母は、自分の不安感と戦っているのである。

「お休みなさい」母に声をかける。

「こんなとこで、ねさしてもろて、ありがとうございます」

「良かったな~、ゆっくり、寝れるよ!」

「あいよ~、おやすみなさい」私も、返事を返すと、しばらくして、母の寝息が聞こえてきた。(お袋ちゃん、今日も勝って良かったな~)と、私は思うのだ。今日も恙無くだ。





   「どっちがええかな~!」

2005/5/31(火) 午後 0:32
某月某日 母との生活は、毎日が真剣勝負である。それだけに、生活には、一定のリズムを持たせ、常に母の言動に注意を怠ってはならない、と私は思っている。

「もう、これでえ~かな~」と、母が洗濯物をたたんでくれた。

「ああ~、え~よ、有り難うさん!、よ~け、畳んでくれたな!」取り込んだ洗濯物の山。

「にいちゃんのもあるで~」と、母が。

「うん、分かった、僕のは持っていくわ!」

「これ、だれのんや?」

「それは、お袋ちゃんのやっ!」

「わたしのん?、こんなんあったか?」

「うん、え~服やろっ」

「こんなんしらんで~」

「一昨日、学校へ、着て行ったやつや!」

「しらんわー、きたことな~い」

「そうか、ほんだら、明日着て行こうか?、格好え~やんか!」

「にいちゃん、そないおもう?」と、母の表情が和らぐ。

「え~色やー、お袋ちゃん似合うで」

「そうか、ほんだら、きていこうかなっ」母が笑顔を見せる。

「そうしぃ」私もニッコリする。

「おしっこやけどなぁ」

「うん、はいはい、行きましょうか」便座に座った母が。

「コシがな~、イタいねん」

「そうか、後で痛み止めのお薬飲もな!」

「あるのん?ウレしいぃ!」

「おしっこ、もう、え~か?」少し水音が聞こえたような気がした。

「まだやねん、で~へんかったら、どうしたらえ~のんかな~」

「さっき、したかったから、もう直ぐ出るんと、違うか?、ひょっとして、うんちかな~」

「わかれへん、どっちがえ~かな」と言いながら、母は急に背をそらして。

「う~ん」と、いきみはじめた。一生懸命、生きている証拠だ。

PS 今朝のTVニュースで「社会保障制度」見直し、「介護保険の抑制」が流された。要支援、要介護1、の方々は老健施設にも入れなくなる、可能性が出てきた。それ、以外の介護度の方々は月額の保険料が大幅にアップする。認知症や寝たきり老人からも容赦なく「金」を取る。自分の家族は自分で守るしかない。





    《2005年6月》

   「そうやねん、これもせなあかんから、いそがしいねん」

2005/6/1(水) 午後 0:33
某月某日 嬉しそうに、デイ施設から母が帰ってきた。一服したら、夕食だ。この、夕食を出すタイミングが、最近は、非常に微妙で、難しくなってきた。食べさせるまでが、その呼吸が未だ読めない。まだまだ、未熟。

「お袋ちゃん、夕飯出来たよ、食べよか~?」

「うん、、、、、、、」余り、乗り気でない、ご返事だ。

「僕も食べるから、冷めんうちに、はよ、食べよ~な」

「まだ、ちょっとな~」ポケットから、折り畳んだティシュを取り出し、一枚一枚、丁寧にテーブルに広げている。

「お腹すいたやろう、早よ、食べよ~」と、ゆっくり母を促す。

「あのひとだれ?」とテレビを指差す母。

「00さんや!」(まずい、母がテレビを見ると食事を嫌がるのだ)。

「そうか?しらんかったーっ、どこにすんでんのん?」(ま~あ、ゆっくり待つしかないか、と私)。

「00と違うかな~」(こう言う時に、適当な生返事をしてはならない)。

「ここどこやのん?」移り変わる、テレビ画面を見だした。

「00やろ~、この風景、見たことあるからな」(母と一緒にテレビを見てやる事の方が大切なのだ)。

「そうか、にいちゃんいったことあるのん?」

「うん、昔、行ったわ」

「はは~ん、こけてるわー、おもしろいひとやな~、だれや?」

「最近よ~出てる、漫才の人ちゃうかな~」話題を変えるタイミングは、母が笑顔を見せた時である。

「ご飯食べてから、ゆっくり見たらえ~やん」