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かいごさぶらい
かいごさぶらい
novelistID. 16488
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かいごさぶらい<上>続き(2)

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「わーっぬくいわ~、ゆ~がでてるやんかー!」

「目え、覚めるやろう」

「ほんまやな~、にいちゃんがしたんか~」

「うう~ん、出るようになってるんや!」

「へぇ~、ほんまかいな、しらんかったー!」

「お茶、おいしいわ、にいちゃん」

「そうか、良かったなー!」

「だれが、いれたん?」

「僕やんか~」

「そんなことまでしてくれたん、ありがとうございます」母が、私にお辞儀する。

「眠たないか~」

「ねむたないよ~、なんでやのんなー」

「夕べ、お袋ちゃん、何回も起きてきたからな~、眠たぁないかなー、と思うたんや!」

「なんかいもっ!おきたっー!わたしがっ!そんなことするわけないやろー!」そうでした。母が夜中に6、7回起きて来てきたことなどは、既に過去のことなのである。




    「おか~さん、ねかしてーっ!」徘徊、その(2)

2005/5/23(月) 午後 1:12
某月某日 母の夜中の徘徊は、就寝直後の2時間以内か、明け方近くのやはり2時間直後に多いことが、何となく、分かって来ていた。この日も明け方近くの午前3時過ぎ頃か。

「おか~さん、おか~さん」と、母の声。私が起きるまで、声は続く。

「どうしたんや、寝られへんのんか?」

「ねむたいけどな~」と、母。四つん這いで部屋の中をウロウロする。

「風邪ひいたら、あかんから、寝よな~」母を寝間へ。

「うん」と、返事はしたものの。半時間後。

「おか~さん、おか~さん」母が寝間から這い出て来た。

「なんか、夢でも見たんか~」

「ゆめ、ちゃう、ねむたいねん、どうしよう、わかれへんねん、、、」と、途方に暮れた様子の母。そう言いながら、母は私の寝床で座り込んだ。

「ここで、寝るか?」私の問いかけに。

「うん、ねるわ」このまま、静かに寝てくれたら、と思いつつ。

「にいちゃん、おしっこ」おトイレの帰りに、そのまま、母の寝床へ連れて行く。

「ここで、ねたらええのん?」

「そうやで~ゆっくり休みや~」

「おか~さん、おか~さん、ねかしてー」と、この日、何度目かの母の声。この声を聞くたびに、私は「お袋ちゃん、可愛そうになー、変な病気やなー、心配せんでもえ~よ、僕がついてるからな~」と、心の中で呟くのである。




    「さびしいねん」徘徊、その(3)

2005/5/24(火) 午後 0:51
某月某日 母の連日の徘徊で、私は、ダウン寸前。会社でとうとう「寝とけや」と言われる始末だ。

「おか~さん、おか~さん」と母が四つん這いで例によって、私の寝床へやって来た。寝入り鼻と連日の寝不足で、私がなかなか目覚めない。と、母は私を起こしにかかる。布団を引っ張り、揺らし、顔を叩き始めるのだ。

「ちょっと、待って、お袋ちゃん、分かった、もう、起きたよ!」寝込みを襲われた私。

「わたしが、よんでんのに、なにしてんのん?」

「どうしたん?」と、母の顔を見る。

「おしっこやねん、どこにいったらえ~のん?」不安げそうな、母の顔。

「はいはい、行こか~」おトイレが終わり、母を寝床えへ、1時間と経たないうちに。

「おね~さん、おね~さん」と母の声。もう、2,3度起こされているので、眠りの浅い私は、母の声が直ぐ分かる。

「どうしたん?、寝られへんのんか?」母の居室へ。

「どうしょう、にいちゃん、わかれへんねん、わたし、おかしなったんかな~」と、言いながら起きようとする母を、、、。

「そんなことないよ~、はい、こっちで、寝よな!」と、しばらく、母の寝床の傍らで横になる私。

「な~んにも、心配することないで~」と、母の寝床で私が添い寝をする形。母が寝息を立てたのを聞き、なんの屈託もない母の寝顔を確かめて、私は自分の寝床へ。すると、半時間も経たないうちに。

「にいちゃん、にいちゃん、さびしいいねん」と、母の声が。私は、母を自分の寝床へ連れてきた。すでに、リビングのカーテンの隙間から、夜明けの陽差しが差し込んでいた。母と私は同じ寝床で、、、。




    「し(死)んでしまうかもわからんな~」徘徊、その(4)

2005/5/25(水) 午後 0:33
某月某日 日が昇ると、母はご機嫌で、日が沈むと、不安感を増すようだ。特に、就寝前は落ち着きが無くなり、不安になるようだ。

「おトイレ行って、もう、寝ましょうか?」と、母を促す。

「うん、そうやな~」

「明日また、学校(デイ施設)やから、はよ寝よな~」

「あした、がっこうか~、なにするんや?」

「明日はな~、お袋ちゃんの好きな、カラオケ大会やでー、歌好きやろ~」母は、ニッコリして。

「うん、スキやー!」

「良かったな、遅れんようにせななっ!」

「そうやな、にいちゃん、かしこいな~、え~ことゆ~わ!」

「僕が、ちゃんと、起こしたるから、ゆっくり寝ぇ~や!」

「はい、おやすみなさい」私も就寝。この後、2,3度おトイレへ。

「おね~さん、おね~さん」と、母が呼ぶ。

「また、おトイレか?、ちょっと今日は多いのんと違うか?、どうしたんや?」

「わかれへんねん、し(死)んでしまうかもわからんな~,,,」と、不安げな顔をする母。

「なに言うてんねんな~、心配ない!」(こう言う時はキッパリと言うのが最良だ)。この母の、全てを私は自然に受け止めるだけである。




    「ふっふ~ん、かわいいやろ~」徘徊、その(5)

2005/5/26(木) 午前 11:23
某月某日 認知症の介護の要諦は「会話」にあると、私は母から、教わった。そこから、笑顔を引き出すことが出来れば、どんな会話であろうと、かまわない。それで母と一緒に暮らすことができるのであればそれで良い。夜明け間近い、この日何度目かの徘徊。

「はいはい、行こな!」母をおトイレへ。

「にいちゃんのてぇ、つめたいなぁ~」

「そうか、お袋ちゃんのは暖かいで」

「ねむたいねん、どこいったらえ~のん?」

「もう直ぐや、すぐそこやからな!」

「はよしてぇ」

「はい、此処やで~」母を便座に座らせる。

「コシがな~、イタいねん、なんでやろう?」

「うん、お袋ちゃんの腰な、折れてしもうたんや、そやけど、寝る前に痛み止め飲んだから大丈夫やで~」

「そうかなー、ふっふ~ん」

「なにか、嬉しいのんか?」

「にいちゃん、え~フクきてるな、なんぼしたん?」

「これか~、00で、買うたんや、000円や、安いやろっ!」

「へ~え、そんなんで、うっとたんかいなー、わてのわ~」

「お袋ちゃんのはな、姉~ちゃんが、え~の買うてきたから、高いんとちがうかな~」

「ふふぅん、え~フクか?」

「うん、よ~似合うてるで!」

「ふっふ~ん、かわいいやろーっ!」

「うん、可愛いで~」便座に、ちん、とお座りの母を見上げながら真夜中の親子の会話である。




    「ごめんな~、にいちゃんばっかりさして~」徘徊、その(6)

2005/5/27(金) 午前 10:48