小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かいごさぶらい
かいごさぶらい
novelistID. 16488
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

かいごさぶらい<上>続き(2)

INDEX|4ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 

「此処やで、ここで、シャワー浴びるさかいな~」と、私は浴室へ入るドアを開け放して、リビングで珍しく一人きりで、TVを見て笑っている母に声をかけた。

「うん、そんなとこかいなー」と、母がこちらを見て、手を振った。

「そうや、近いやろう、直ぐ、終わるからな!」と私は返事をした。母が私を探し出す時間の限界は5分くらいだ。手早く浴びて、頭の洗髪の時に顔を見せなければ。

「もう直ぐやで!」と、リビングの母に声をかけながら、シャワーを浴びる。

「あいよー」と母。頭の洗髪にとりかかり、終わりかけたとき、浴室のドア付近で。

「にいちゃん!、にいちゃん!」と母の声。あわてて、私は、真っ裸のまま、浴室から飛び出した。母がいつの間にか廊下へ出て、玄関の方に向かっている。

「お袋ちゃん、何してんのん、危ないやんか~、こけたら、どうすんのん!」私は裸で母を追う。

「こけへんわー!、あんた!、こんなとこで、なにしてんのん、はよ、こんかいなー!」

「シャワー浴びるで~て、言う~たやろ~な」

「しらん!、きいてへん!」

「お袋ちゃんな~、直ぐ、忘れるから~」(しまった、この言葉は禁句である)。

「きいてへんわーっ!、わたしを、にんげんとおもってないんやろーっ!」眉間にしわを寄せて怒る母。

「う~ん、、、、、、、、、、」(後の祭りだ)。母は、私の口調の、少しの変化も見逃さない。まだまだ精進が足りない。




    「わたしはなー!、にんげんやでっー!」考えさせられる言葉、その(2)

2005/5/17(火) 午後 0:32
某月某日 母はデイ施設から、タオル、バスタオル、お箸、コップ、パンツ、シャツなど、様々な物を取り違えて自分のバッグに仕舞い込んで帰ってくる。デイに持っていく物は殆ど、母の名前を書いてある。デイに通ってくる他の人達も、もちろん、名前が入っている。だから、取り違えると直ぐに分かる。今日も、デイの送迎バスから、満面の笑みを浮かべて。

「にいちゃんやーっ!!」と、手を振ってご機嫌よく帰ってきた。

「お帰りなさい」

「むかえに、きてくれたん、うれしいぃー!」

「しんどなかったか?」と、母の両手を握る。

「うう~ん、ぜーんぜん、しんどない」

「良かったな~」と、何時もの会話、そして直ぐに持ち物を改める。

「お袋ちゃん、これ、うちのと違うで~」

「そうか~、だれのんや?」

「00さん、て書いてあるで~」

「しらんわ~、そんなひと!」

「明日ヘルパーさんに言うて、返しとかなあかんな!」

「わたしのん、ちゃうのん?」

「ほ~ら、見てみぃ、ここに、00さん、て書いてあるやろう」

「ほんまやな、わたしのんと、ちゃうわ~」

「この、タオル、洗う~といてやらなあかんな!」

「そうしいぃ~」

「お袋ちゃんの名前はこれやからな!、もう、間違わんよ~に、せんとあかんで~」

「だれが、いれたん?、わたしは、しらんで~」

「お袋ちゃん、すぐ、忘れるからな~(しまったーっ、禁句を)、間違うて、入れてしもたんちゃうかな~」私は気づいて、トーンダウン。

「そんなこと、せーへん!、わたしはなー、にんげんやでー、わすれへんわーっ!」案の定母が怒りました。

「う~ん、、、、、、、、」(同じ間違いを何度繰り返して来たことか、お袋ちゃんご免な~)。母は一人の人間だ。




    「わたしのためにぃ~、な~、ありがとうございます」考えさせられる言葉、その(3)

2005/5/19(木) 午後 0:47
某月某日 この日は、宅配便が立て続けに2回届いた。マンション独特の無機質な「ピーンポーン」と鳴るチャイムに、母は未だに馴染めない。(私もだが)。

「ピーンポーン」1回め、この音を聞くと、、、。

「だれやっー!」と、声を荒げ不機嫌になる母。

「宅配便や」

「なんで、いまごろ、くるのん!」

「昼間は、僕らは、おらんときが、多いからな~」

「こんな、おそーからー、あほちゃうかーっ!」と、母はこのチャイムが鳴ると一変に、不機嫌になる。ときには。

「ほっときぃー!」と言うこともある。

「お袋ちゃん、00先生からや」

「00先生て、だれやのん?」

「うん、僕がお世話になってる剣術団体の先生や」

「なんの?せんせい、やてー?」

「そやからな~、武道の先生やんか、先生の奥さんから、手作りの食品を送ってきてくれはったんや」

「なんで~、そんなことするのん?」私が、所属している武道団体の会長だ。その方は、私が90うん歳の母と二人暮しを良くご存知なので、奥さんが、時折こうして、手作りのいろいろな料理を送って下さるのだ。私は全く料理が出来ない。ために、母には、お惣菜や時には恥ずかしながら、コンビニの弁当で夕飯を供することになる。そのコンビニ弁当を母が。

「おいしいわ、にいちゃん、つくったん、わたしが、やらなあかんのに、ごめんな~」と、私に言ってくれる、胸中複雑である。

「美味しいか~、良かった~」と、答えざるを得ない、我が心中は忸怩たる思いで一杯である。こうした生活は「阪神淡路大震災」で被災し、このマンションに移って来て以来、続いている。チャイムの音に対する母の反応もしかりだ。

「にいちゃん、ぶじゅつて、なんやの~?」

「ほら、僕が昔からやってる剣術やんか~」

「あ~、そうか~」と、その時、また、チャイムが鳴った。

「またやーっ!、だれやー、ならさんよーに、ゆーといてーなっ!」

「お袋ちゃん、妹の00からやで」

「00?、しらんでぇ~」

「お袋ちゃんの、子~やんか、母の日やからな~、カーネーションのお花、贈ってきてくれたんやで!」

「おハナか~みたいわー!」

「良かったな~、お袋ちゃんがな~何時までも、元気ですごせますように、ゆ~て、贈って来てくれたんやで~、後で、00に電話しとこなー!」

「わたしのために、なぁ~、ありがとうございます」ペコリとお辞儀する母。そして母は、テーブルに置いた妹からの贈り物に手を合わせる。母の感性は全てを分かっている、と私は確信している。




    「わたしがっ、そんなことするわけないやろーっ!」徘徊、その(1)

2005/5/20(金) 午後 0:31
某月某日 母が夜中に徘徊を始めたのは、何時の頃からか、私の記憶は曖昧である。最初に母が徘徊した時、多分そんなに驚かなかったのだろう。

「もう、おきてもよろしいか?」朝の7時過ぎだ、私が6時半に起き、ゴソゴソするので、「音」に敏感な母は、直ぐに気づくのだ。

「もうちょっと待ってや~、いま、お茶沸かしてるからな~」

「あいよ、ありがとうございます」数分も経たないうちに、四つん這い(母は圧迫骨折で腰骨を2回折っている)になって、母がリビングにやって来た。

「おはようさん、よ~眠れたか~!」

「おはようございます、うん、ねたよ~」

「そうか、はい、この座椅子に座り~」

「にいちゃん、はよ、おきたんか?」

「うん、さっき起きてな、今お茶飲んでんねん、お袋ちゃんも顔洗って飲みな!」

「あいよ、カオあらうわ~」