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かいごさぶらい
かいごさぶらい
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かいごさぶらい<上>続き(2)

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「お袋ちゃんらの知ってる歌やで」

「どんなんや?うと~うてみぃー」母の好きな、童謡唱歌を2~3曲、私がワンコーラスを口ずさむ。

「あーっ、それやったら、しってるう」母は手を叩いて嬉そうに言う。

「そうやろ~、早よ、食べて、学校いかな、唄われへんで!」

「いらん、にいちゃんたべ~!」

「食べな、元気で~へんで!」

「でんでもえー」

「服も着替えな、あかんしな~」

「さぶいねん、フクきせて~なー」この間、母は、ニコニコしながら、私との会話を嬉しそうに、表情豊かに良く喋るのだ。

「さあー、靴下も履き替えとこなっ」

「なんでやのん?」

「何日も同じ靴下はいとったら、汚れるやろう~」

「よごれてないわーっ!」

「あかん、あかん、ほれ、靴下、脱ぐで~」

「なにすんの、イタいやんかー、どついたろかー、ふっふ~ん」

「わーっ、そんな言葉、どこで、覚えてきたんや!」母はこうした、お喋りが大好きだ。終始、にこやかに、母と私の会話は、デイの送迎バスがやって来るまで、続く。これで、母は機嫌を損なうことなく、デイへ出かけるのだ。





   「これ、さきに、しとかな、あかんやんか、それもわからんの!」こみゅにけ~しょん、その(2)

2005/5/10(火) 午後 1:13
某月某日 今日は、デイ施設でお風呂に入った日。週三回だ。ちょっと、お疲れ気味だが、機嫌は悪かろうハズがない。さあー、夕食である。

「出来たよ~、食べよか~」

「あいよ!」

「お袋ちゃんの好きな00買~てきたからな、美味しいで」

「にいちゃんがしたん、わーっうれしいぃ!」

「温いうちに、食べよな~」

「あいよ」と、返事は良かった、母だったが。

「ははあーっ、わたしみて、わろ~てるわー」と母は、テレビを見始めた。

「ほんまや、えらい、お婆ちゃんが見てるな~、思うて、笑ろ~てんねんで!」

「ははあーっ、そうかな~、あれ、だれや!」

「東京の00さんちゅう、タレントさんや!」食べながら私が説明する。

「どこやのん?」

「東京ちゃうかな~、お袋ちゃんも、早よ、食べや~」

「どこから、きたん?」

「僕も、知らんわ~」

「あんたも、しらんのんか~?」

「うん、知らんねん、お袋ちゃん、冷めるで~早よ、食べよう」ようやく、母が箸を手に取り、一口、二口食べ始めた。

「どうやっ、美味しいやろう」

「そうでもないっ!、あまないわ~」

「お菓子とちゃうねんから、あんまり、甘いことはないけどな~、ご飯食べてみ、熱いから、美味しいで!」

「にいちゃんが、つくったん?」

「うん、そ~やで」私の声は、後ろめたい気持ちでトーンダウンする。料理は全く出来ないからだ。(スーパーの総菜で誤魔化しているのである)。

「こっちみてな~、わろ~とんねん」と、母がテレビのお笑いタレントの画面がアップになる都度、そう言う。

「食べてから、ゆっくり見よな~、今日は、お袋ちゃんの好きな、0000もあるよう」

「ほんま!、ウレしい~ィ」と、言いつつ、また、一口、二口と箸を口に運び始める。

「にいちゃん、おしっこやねんけど、どこでするん?」

「はいはい、行こ~うか」トイレから帰ると、しまった、母の手がティシュに伸びた。

「お袋ちゃん、仕事(ティシュを一枚一枚取り出し丁寧に折り畳んで積み上げていく作業)は、ご飯食べてからしたら~」

「これ、さきに、しとかな、あかんやんかー、それもわからんのっ!」と、キッパリ。はい、そうでした。私の油断が招いたことだから仕方なし。だんだん食が細くなる母。食事に興味を示さなくなってきているのが、私の心配の種だ。

PS:昨日の新聞の朝刊:4面、介護保険、改正案、衆院通過の二段見出し。自民、公明、なんと!、野党の民主までが賛成しいる。先日、母がお世話になっている、デイ施設の懇談会で知らされたばかりの法案だ。介護給付費を抑えるのが狙いである。この国の憲法25条にはなんと書かれてあるのか承知の上か。大新聞も落ちたものだ。私も物書きの端くれ、4面に掲載の記事ではありえないくらいの判断は当然つく。一面トップで報じて当たり前の事件!だ。わが母もこの国から、見捨てられた、と実感させられた。




   「ふ~ん、わたし、えらいのんかー、え~ことゆ~なー」こみゅにけ~しょん、その(3)

2005/5/13(金) 午後 0:45
某月某日 母がデイから帰ると、夕食まで、男子禁制?、のDKで私は買ってきた惣菜で調理(パックを開けてお皿に盛るだけだが)。TVはつけてあるが、滅多に母は関心を示さない。カウンター越しに、もっぱら。

「にいちゃん、なにしてんのん?はよ、おいで!」

「うん、もうちょっと、待ってなあ、晩御飯の用意してるからなっ」

「へぇ~、にいちゃんが、そんなことしてるん、ごめんな~、ありがとう」ペコリとお辞儀をする母。

「直ぐ、出来るもんやから、僕でも出来るわ~、お茶でも飲んで、待っといてなっ」

「ありがとうございます。のましてもらいます、はよおいでな~」

「側に、いてるんやから、何~んも、心配せんでえ~よ、お袋ちゃんの方が、これまで、苦労してきたんやからな~」

「くろうしたん!」

「そうやで~、苦労したんやで~」

「しらんかったわー」

「忘れたんか~、姉ちゃん、に僕、00に00も、四人も子供育ててきたやんか~」

「わたしがかー?そうやったかー?わからんねん、どうしょうー?」

「戦争中な~、お袋ちゃんな~、姉ちゃんを背負って、空襲から、逃げ回ったんやで~」

「ねぇ~ちゃん、どないしたん?」

「00に嫁いで、孫もできて、もう、お婆ちゃんやがな~」

「へぇ~、それ、ほんまかー、しらんかったー、なんで、ゆうてくれへんのん?」

「うん、ま~な、それから、お袋ちゃんと親父となっ、二人で苦労して、僕らを育ててくれたんやんか~」

「そんな、よ~け~か~?」

「そうやで~、親父とお袋ちゃんのお陰で、み~んな、孫もできて、ひ孫もできて、いま、幸せに暮らしてるねんで~」

「そんなことやったんかいなー、な~んにもわからんねん、どうしょうー?」

「そやからな、お袋ちゃんは、偉いねん、み~んな、感謝してんねんでー!」

「ふ~ん、わたし、えらいのんかー!、え~ことゆ~なー!」

「さあ~、お待ちどうさん、お袋ちゃん、出来たで~、一緒に食べよか~」

「まぁー、にいちゃんが、つくってくれたん、ありがとうございます」と、母は何の屈託もない。デイ施設からの連絡帳に。

「00さんはいつも、素敵な笑顔で今日もご機嫌でしたよ」と記されてあった。




    「わたしをっ!、にんげんと、おもってないんやろーっ!」考えさせられる言葉、その(1)

2005/5/16(月) 午後 1:38
某月某日 先日の日曜日、親子二人きりで、のんびりだったが、夕食後に異変が。

「お袋ちゃん、シャワー浴びてくるわな~」

「あいよ、あびといでー」

「有り難うさん、直ぐ、浴びるからな~」

「ゆっくりで、え~よー」