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かいごさぶらい
かいごさぶらい
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かいごさぶらい<上>続き(2)

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「うん、今、さっき、行ったばっかりやでぇ」

「そやけど、おしっこ、したいねん」

「そうか、ほな、行こうか、もう、出~へんのん、ちゃうか」

「わかれへんねん、アホになってしもたんかな~」

「そんなことあるかいなあ、阿呆になったら、おしっこも分かれへんように、なるやんか、お袋ちゃんは、ちゃ~んと、おしっこ、て分かってるやんか~、なーっ、そうやろう!」

「そうかな~、ほんまに、そうおもう?、にいちゃん」この時の母は、本当に不安げな表情をするのだ。私は、こうした母を見る都度(お袋ちゃん、変な病気になってしもうたなー)と心底思うのだ。

「そう、思うよ、阿呆、ちゃうでぇ、心配せんでもえ~んやから!」

「そうかも、わからんな~、あーっ、にいちゃん、もぅあかる~うなってきたわ~」

「ほんまやな~、もうちょっと寝よな~」母の表情が少し和らいできた。

「うん、かぶしてな~」母の不安は、私の不安でもあるのだ。





    「もう、イエかえりたいねん、はよ、かえろう~」

2005/5/6(金) 午前 11:17
某月某日 母は夕食後に、お仕事(ティシュペーパーを一枚一枚取り出しては、丁寧に折り畳んで重ね、テーブルの上に積み重ねる作業)を終えると。

「にいちゃん、もう、かえろうか?」作業が一段落したらしい。

「う~ん、何んでぇ、何処に、帰るん?」

「もう、かえらなあかんやろ~」

「帰る言うたって、ここが、お袋ちゃんの家やで~、忘れたんかいな~」

「ここっ!、ここわたしのイエちゃうでぇー!」さあー、この辺りから、延々と親子の食後のちょっと、奇妙な、しかし、大切な絆を深める、真剣かつ楽しい会話が続くのだ。この会話は、10年前の「阪神淡路大震災」にまで、遡る。何故、いま、このマンションに親子二人で住むようになったかを、母の感性に私は訥々と訴えなければならない義務があるのだ。

「なあ~お袋ちゃん、分かったか~?それでな~、今ここに、二人で住んでんねんでぇ~」

「あんたはなー、しらんから、そういうこと、ゆうねん、イエかえらな、みんないてるねんでー」

「誰が、いてるん?」

「あほかいなー、わたしのおかあさんや、おとうさんやんかー!」と、母。

「そやけど、明日、学校(デイサービス施設)やんかあ、もう、遅いし、今日はここに泊まろ~な」

「あんた、とまりぃー、わたしかえるわーっ!」母はプイと横を向く。(これはまずい展開だ)と私の経験則がそう言っている。

「分かった、わかった、ほな、おしっこ、してから、帰ろ~か!?」

「もう、イエかえりたいねん、はよ~、はよかえろうー」

「おしっこ、しとかな、あかんやんか~、なあ、そうやろう?」と、粘る私。母は、差し出す私の両手を、渋々握り、不満そうに、おトイレへ。母の感性に何かしら響いたであろう。トイレから帰ると、そのまま洗面所で顔を洗い、母の居室へ。

「さあー、寝よな~!」

「コシが、イタいねん(母の腰は過去に二回圧迫骨折をしている)」

「さっき、痛み止め、飲んだから、大丈夫やでぇ、ゆっくり寝~や」

「うん、にいちゃん、かぶして~やー(掛け布団のこと)」

「はい、お休みなさい」掛け布団を掛けてやると、母はスーッと寝入った。私は、母の寝顔が大好きだ。今日は出かけずに済んだ。





    「よんでんのにぃ、へんじもせんでー!」

2005/5/7(土) 午後 1:55
某月某日 私は下戸、楽しみは、日に13本ほど(以前は1箱半くらい)吸う煙草。半分以上は会社で吸うが、家で4~5本。ベランダで、紫煙の先の青天を見上げるとエンジンがかかる、今日も食後の一服を、と思いベランダ゙へ、、、。

「お袋ちゃん、ちょっと、煙草吸うてくるわな~」と、私は母から離れる時には必ず声をかける。ちょっとしたことだが、これが、痴呆症(認知症)になってしまった母と共に暮らす為にかけがえのない事だと、思っている。

「あいよ」と、ご機嫌良さそうなご返事。

「まだ、ちょっと、寒いから、戸閉めとくわなあ」

「うん、いっといで~」母は、何時ものお仕事に夢中だ。(ティシュを一枚一枚取り出し、丁寧に折り畳んで、テーブル上に積み重ねていく作業。母のこの作業には、絶対に口出ししてはならない)。

ベランダの戸越に母のこの作業を眺めながらの一服である。時々、母がこちらを見て、畳んだティシュを。

「にいちゃんできたで~」と言わんばかりに、私に見せる。

「わ~っ!ほんまや、綺麗に畳んでるやんか~」と私が、声を返すと。

「はよ、こっち、おいで~な」と母が呼ぶ。身振り手振りで。

「この、煙草吸うたら、いくからな~」と私。

「まだかいな~、はよ、すいや~」と母が言っているようだ。双方、ぶ厚い、ガラス越しのゼスチャーだから、実際の声は殆ど聞こえない。

 ベランダには、木の椅子と灰皿が置いてある。ほんの十数秒ほど、腰を掛ける。この瞬間、リビングに居る母からは、死角になって、私が見えなくなる。

「は~い、煙草、吸うたよ」と言いながら、ガラス戸を開け、リビングに入ると。

「よんでんのに、へんじもせんでー!」と、母がふくれる。この間、約1分ほどか。私は、また一つ教えられた。時間の長短は、母には全く関係ないのだ、と。





    「どついたろかー、ふふふ~ん」こみゅにけ~しょん、その(1)

2005/5/9(月) 午後 1:54
某月某日 私は、母との会話を何よりも大切にしている。母が痴呆症(現在は認知症と言われている)になってから、経験則で母から教わったことである。毎日デイサービスに通っている母との会話は、自然と朝晩の食事時が多くなる。

「ゆっくり食べや~」

「おいしないっ!」と、素っ気ない母。

「そんなことないよ~、お袋ちゃんの好きな、ヨーグルトと甘い、チーズパンやでぇ」

「たべさせて~」と、母。

「自分で食べな、あかんやんか~、お袋ちゃんは、赤ちゃん、ちゃうねんから」

「うんっ、あかちゃんとちゃうわー」

「ほな、自分で食べな」

「にいちゃん、たべ~」

「僕は、もう、さっき食べたよ~」

「そんなはよぉ~、いつ、たべた~」

「うん、ちょっと前やで」チーズパンを小割にして、母の口元へ運ぶ。

「ほ~ら、あ~んして、食べてみぃ~や、美味しいで」

「そんな、おおきいのいらん!」

「とにかく、甘いねんから、食べてみぃ!」母が口を開けたので、放り込んだ。

「うん、おいしいわ~」と、母が笑顔で言う。

「そうやろ~、はい、自分でこうして、割って、食べてみ」

「あんまり、ほし、ないねん」

「なに言うてんのん、食べな元気で~へんで」

「げんき、でんでも、えー!」

「食べな、学校(デイサービス施設)行かれへんやんか」

「いけへん!」

「ヘルパーさんや、先生がな~、00さ~ん、学校行きましょうかー?、言うて、もう直ぐ、きはんねんで」

「がっこう?、しらん、いったことないっ!」

「お袋ちゃん、歌、好きやろ~、今日はな~、学校で、カラオケ大会やで」

「どんな、うた、ウタうん?」