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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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黄金の里

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「刀では本当の幸せはつかめん。鍬や鋤を作れ。それが国の栄える元じゃ」
 けれど伊作にはそれが理解できません。
「ふん。戦で勝った方が国が栄えるんだ」
と、心の中でつぶやきました。

 その日から、父ちゃんは刀を作らなくなりました。そして別の鍛冶場を建てて、鍬や鋤や鎌を作るようになったのです。
 殿様がこれを見逃すはずがありません。父ちゃんはお城に呼ばれました。
 殿様に問いつめられた父ちゃんは、少しも動じず、申し開きをしたのです。
「もう、これだけ大きな国になったのです。刀ばかり作っていては畑を耕すことはできません。鍬や鋤こそ今必要なのです」
 けれど野心に満ちた殿様は、怒って父ちゃんを牢屋に入れてしまったのです。
「父ちゃんはばかだ。殿様のいうことを聞いて刀を作っていれば、贅沢な暮らしができるのに」
 伊作は父ちゃんの分も働いて、二十歳になる頃には、周りの国にも名の通った刀匠になりました。
「おれの刀を使って戦に勝っているんだ。おれが手柄を立てているのと同じだ」
 伊作はますます傲慢になりました。
 
 ある時、伊作は西の国にとてもよい鉄があるという話を行商人から聞きました。
 そして、その鉄を使ってぜひとも刀を作ってみたくなったのです。
「殿様。このわたしを西の国におつかわしください。その鉄が本当に良いものか、この目で確かめたいのです」
「わたしもその噂は聞いておる。よし、おまえがじかにいって確かめてみよ」
 殿様は、こころよく承知してくれました。
 長引く戦で、この国の鉄は底をつきそうだったからです。
 西の国は伊作のいる東の国からははるかに遠く、いくつもの国々の向こうにあるのですが、たいそう豊かで平和な国だという噂は聞こえていました。
 ですから殿様は、いずれ攻め取ってやろうと考えていたのです。
 西の国は、戦をしませんでしたが、近くの国々に鉄を売っていました。そうして自分の身を守っていたのです。
 西の国に入った伊作は、さっそく東の国の殿様の親書をもってお城に行きました。
 西の国の殿様もおろかではありません。東の国の殿様が、この国から持って行った鉄で伊作に刀を作らせ、やがてはこの国にも攻め入ろうとしていることを見ぬいたのです。
 殿様は伊作を鉱山に案内させ、ゆっくりと視察させている間に、東の国の殿様宛に親書を書き、早馬を走らせました。
作品名:黄金の里 作家名:せき あゆみ