黄金の里
伊作のじいちゃんと父ちゃんは腕のいい鍛冶屋です。二人の作る鍬や鋤は丈夫で使い易いと評判でした。
母ちゃんは伊作を産むとすぐ死んでしまいました。だから伊作は父ちゃんとじいちゃんに可愛がられて育ちました。
ところが、伊作が五つになった頃、突然じいちゃんは家を出て行ってしまい、父ちゃんもお城に召し出されてしまったのです。
伊作はおばさんの家に引き取られました。そこではみんなが優しくしてくれるので、寂しくありませんでしたが、時々おばさんが愚痴を言いました。
「かわいそうにね、伊作ちゃん。じいちゃんさえ殿様のいうことを聞いていれば、父ちゃんと離ればなれにならなかったものを。じいちゃんは悪い人だ」
それで、伊作はじいちゃんを憎むようになりました。
ところで、この国の若い殿様はたいそう戦の好きな人で、北の国との戦に勝って、今度は南の国を攻めているところでした。
父ちゃんがお城に上がったのも戦に使う刀を作るためだったのです。国中の鍛冶屋が集められ、昼も夜も刀を作らなければなりません。
父ちゃんは、すぐにお城にお抱えの刀鍛冶よりもいい刀を打つようになりました。
やがて、殿様から褒美として大きな家を一軒もらい、伊作と再び暮らせるようになりました。
伊作は十五になると、父ちゃんの弟子になりました。戦はまだまだ続き、殿様は負け知らずでどんどん領地を広げていきました。
伊作はとても筋がよく、二年もすると兄弟子を飛び越えて、父ちゃんに次ぐ腕前になりましたが、いつしか、自分の腕に思い上がるようになりました。
ある日、白髪のおじいさんがやってきました。
「鍬をつくってほしいのですが」
伊作は相手を小馬鹿にしたような目つきでじろじろ見ながら、
「金にならない鍬など作らないよ」
と言って、おじいさんを門前払いしようとしました。
そこへ父ちゃんがやってきました。
「失礼しました。どうぞお上がりください」
「父ちゃん、そんな汚いじいさん……」
「伊作。あやまれ!」
父ちゃんはすごい剣幕で怒りました。伊作はぷいっと外へ出てしまいました。
その晩、父ちゃんはひとりで鍬を作り始めました。まるで鋼をいとおしむように打っています。
その間、おじいさんを客間に住まわせたのです。伊作はずっと不機嫌でした。
鍬ができあがると、おじいさんは伊作にこう言い残して帰っていきました。
母ちゃんは伊作を産むとすぐ死んでしまいました。だから伊作は父ちゃんとじいちゃんに可愛がられて育ちました。
ところが、伊作が五つになった頃、突然じいちゃんは家を出て行ってしまい、父ちゃんもお城に召し出されてしまったのです。
伊作はおばさんの家に引き取られました。そこではみんなが優しくしてくれるので、寂しくありませんでしたが、時々おばさんが愚痴を言いました。
「かわいそうにね、伊作ちゃん。じいちゃんさえ殿様のいうことを聞いていれば、父ちゃんと離ればなれにならなかったものを。じいちゃんは悪い人だ」
それで、伊作はじいちゃんを憎むようになりました。
ところで、この国の若い殿様はたいそう戦の好きな人で、北の国との戦に勝って、今度は南の国を攻めているところでした。
父ちゃんがお城に上がったのも戦に使う刀を作るためだったのです。国中の鍛冶屋が集められ、昼も夜も刀を作らなければなりません。
父ちゃんは、すぐにお城にお抱えの刀鍛冶よりもいい刀を打つようになりました。
やがて、殿様から褒美として大きな家を一軒もらい、伊作と再び暮らせるようになりました。
伊作は十五になると、父ちゃんの弟子になりました。戦はまだまだ続き、殿様は負け知らずでどんどん領地を広げていきました。
伊作はとても筋がよく、二年もすると兄弟子を飛び越えて、父ちゃんに次ぐ腕前になりましたが、いつしか、自分の腕に思い上がるようになりました。
ある日、白髪のおじいさんがやってきました。
「鍬をつくってほしいのですが」
伊作は相手を小馬鹿にしたような目つきでじろじろ見ながら、
「金にならない鍬など作らないよ」
と言って、おじいさんを門前払いしようとしました。
そこへ父ちゃんがやってきました。
「失礼しました。どうぞお上がりください」
「父ちゃん、そんな汚いじいさん……」
「伊作。あやまれ!」
父ちゃんはすごい剣幕で怒りました。伊作はぷいっと外へ出てしまいました。
その晩、父ちゃんはひとりで鍬を作り始めました。まるで鋼をいとおしむように打っています。
その間、おじいさんを客間に住まわせたのです。伊作はずっと不機嫌でした。
鍬ができあがると、おじいさんは伊作にこう言い残して帰っていきました。