只今、イケナイ恋愛中!
「おはよー」
「おはようっ」
「はよ~」
「おはよ!」
馴れない景色と雰囲気。
外国は広くて落ち着かなかったが、極普通に言葉を交わせるこの場では、一つの間違えが今後に大きく影響を及ぼす。
妙な緊張感が湧いてきた。
「お前、高校受かったんだってな!」
「はぁ!?ひでーな、楽勝だよ!」
「同じクラスだねっ」
「良かったぁ~」
地元で名を知れる学校だから、顔見知りがいるのは当たり前のようだ。
しかし潤には、顔見知りなどいない。
いたと言えば、今は潤と別の高校へ通っていた幼馴染みがいた。
その幼馴染は頭が良く、推薦でトップの私立校へ通っている。
潤とは大違いだ。
「ねぇ、いいじゃない。委員長っ」
「ですから、まだ決まった訳ではないですし・・・」
「っ・・!」
後ろで話していた二人のうちの一人、何やら委員長と呼ばれる男が、潤にぶつかってきた。
ドンッと鈍い音を立てて。
「あ、すみません。大丈夫ですか?」
「はい・・・」
顔を見合わせて驚いた。
どんな人かと思っていたが、とても同級生とは思えない。
いや、同じ場にいるからといって、新一年生ではないのか?
「本当にすみません・・・怪我は?」
「いやっ・・・そんな・・・全然平気です!」
スラリとバランス良く伸びた背に、風が当たり黒髪が幽かに靡く。
細く綺麗に光る目で見つめられると、どうも言葉を失い、見入ってしまう。
「そうですか?でしたら良いのですが・・」
制服をビシッと着こなす外見だけでなく、礼儀正しく内面も良いらしい。
「委員長はやくーっ」
「あ、はいはい」
彼はぺこりと頭を下げると、呼ばれた方へ走っていった。
「・・かっ・・・かっこいい・・!!」
男にここまで見とれた事はないが、きっと潤自身の憧れなんだと思う。
自分より倍に背が高く、全てを上手くやりこなす正しさ。
それを持っていない潤の、憧れだ。
「・・俺・・何組だろう・・?」
気づけば辺りに人は少なく、徐々に各教室へ向かったらしい。
潤も確認し終えると、小走りで教室へ向かった。
作品名:只今、イケナイ恋愛中! 作家名:蝶々。