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circulation【1話】赤い宝石

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 相変わらずのスタイルの良さに、心の中でため息をつきつつも、自分のものとは比較しないよう心がけて、慎重に視線を移す。
 彼女が赤い石を傾ける度に、ライトに照らされた石から赤い色をした影が彼女の頬や胸元に落ちた。

『雑貨を届けてほしい』
 そう言った少女が開いた手の平には、赤い石が握られていた。
 研磨してあるのか、もともとこうなのか、丸いフォルムのその石は
 鮮やかな色で輝きを放っている。
 宝石……なんだとしたら、その大きさ、結構な値打ちのものではないのだろうか。

 管理局を通さない依頼ということは、どこにも履歴が残らないわけで、はじめから『宝石を届けてくれ』などと言っては、そのまま宝石だけを持ち逃げられる危険性も十分ある。
 妖しく艶めく赤い石に目をやって、考える。
 では、この石を託された私達は、彼女に信頼されたという事なのだろうか……?

 明日一日歩けば、明後日にはトランドに着くはずだ。
 この石は、ちゃんと彼女のお姉さんに届けてあげたい。
「ラズー、お湯溜まったー」
 バスルームから、フォルテがひょっこり顔を出す。
「あ、ありがとー。じゃあ入ろっか」
「うんっ」
 この、溜めたお湯に浸かるという入浴法をとる人間は、この辺りでは非常に珍しい。
 デュナもスカイも、年中通してシャワーのみだった。
 私には、ゆっくり浴槽に浸かって、歩き疲れた足をしっかり揉み解す事こそが、疲れを癒す最良の方法だと思えるのだけど……。
 着替えを抱えてバスルームに向かう私に、デュナが声をかけた。
「悪いけど、先に寝るわね」
 振り返ると、赤い石はもう仕舞い込まれていた。

「はーい、おやすみなさい」
「おやすみ」
 バスルームから、脱ぎかけの服に絡まったフォルテが慌てて顔を出す。
「お、おやすみなさいっ」
「はい、おやすみね」
 ひらひらと手を振って、ベッドにもぐりこむデュナを背に、フォルテをバスルームに押し戻す。
 ケープがヘッドドレスに引っかかって、じたばたともがいている彼女からよいしょとケープを引き抜いた。
「ぷわっ」と小さな声を上げて、プルプルと頭を振っているフォルテに「明日もいっぱい歩くからね。今夜はしっかり足を休めようね」と声をかける。

 一日目の夜は、こうして更けていった。