たかが映画、されど映画
クローンは故郷をめざす
2008年監督 : 中嶋莞爾
出演 : 及川光博、石田えり、永作博美、嶋田久作
制作 : ヴィム・ヴェンダース
脚本 : 中嶋莞爾
音楽 : 山下雄太
『2010』を彷彿とさせる部分が気になるけれど、良質なSF。
発色もいいし、日本の風景を前後に広く撮らえたカメラのさばきもとても良い。
宇宙飛行士、クローンなどから連想するような荒唐無稽な演出は何処にもありません。
それだけに物足りない方も多いらしく、評価は芳しくありませんでしたが、このような人の内面に視点を置いたSFは、私にはとても久しぶり。
遊んでいる最中に事故で弟を亡くしてしまったという幼い時期の記憶にとらわれている宇宙飛行士と、そのクローンとの間に潜む魂の干渉がテーマですが、その弟が双子だったことが作品に特別な味付けをすることになっています。
及川の宇宙飛行士もいいし、母役の石田の悲しみも静かに胸に残ります。
寡黙な音楽も優れていて、年季の入ったSFマガジンのファン向きの一作です。
作品名:たかが映画、されど映画 作家名:しん よしひさ