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しん よしひさ
しん よしひさ
novelistID. 17130
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たかが映画、されど映画

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ツィゴイネルワイゼン

 1980年

監督 : 鈴木清順
出演 : 原田芳雄、大楠道代、藤田敏八、大谷直子
脚本 : 田中陽造
原作 : 内田百間

 お奨めを記載していますが、そうではないものも一点。
見識者の間ではすこぶる評価の高いものですので、あえて載せます。
 内田百間の「サラサーテの盤」が原作。
 友人だった故・中砂糺の細君小稲が夜な夜な、「主人の貸したものを返して欲しい」と戸口に立つ。
最初は辞書、次が蔵書、そして「ツィゴイネルワイゼン」のレコード。
その場では見つからず、後日返却に友人宅を訪れた主人公の青地豊二郎が見、体験することを描いた作品。
 内田百間の中では、かなり妙な、けれど印象的な一作です。
それを鈴木清順が映像化した本作は、彼の特色である作意的な配色は少ないけれど、まーこうなるだろうとの予測通り、かってのアート・シアター風作品になっています。
 砂に埋もれた二人の男が頭を棒で殴り合う場面が特にグロテスクで、原作の大正文学の風情を大きく損なっています。
 隅々まで神経を行き届かせ撮ってます、と云わんばかりの作品にも、大きなポカがあります。
小稲のセリフ「主人の貸したグラモフォンの12インチ、サラサーテのツィゴイネルワイゼンを返してくれ」
 この作品の重要な小道具が「サラサーテ自作自演のツィゴイネルワイゼンのグラモフォン盤レコード」。
しかし画面に映るのは「グラモフォン盤」ではなく「エンジェル盤」(EMIエンジェルからサラサーテ自作自演集という8cmCDも発売されていました。廃盤)。
 手に入らないなら、わざわざ「グラモフォン盤」などと云わせないか、写さなければいいのです。
 こういう意味のない気取り、持って廻った立ち振る舞いが鈴木の演出ではありますが、他の制作陣の誰も気付かないとは、音楽オンチばかりだったのか、どうせ誰も気付かないとタカをくくったのかどちらかなのでしょう。
「ツィゴイネルワイゼン」とタイトルさえ変更した程なのですから、単なる小道具では済まされないと思うのですが。
 これでは内容を理解しないままの空虚なポーズに見えてしまいます。
 演者も大谷・藤田は好演しているけれど、この頃の原田は演技臭が強く、どの作品も同じパターンで気になります。
 寺山修司のものといい、この手のアート・シアター系アングラ風味の作品は、経年とともに急激に色褪せていくようです。
 見せ掛けに惑わされないようにしなければ。