たかが映画、されど映画
アマデウス
2002年監督 : ミロス・フォアマン
出演 : F・マーリー・エイブラハム、トム・ハルス、エリザベス・ベリッジ
脚本 : ピーター・シェーファー
原作 : ピーター・シェーファー
音楽 : サー・ネビル・マリナー
映画化されたたくさんの音楽家は、マーラーやベートーヴェンのように多少変人ではあっても才能豊かな貴人の場合がほとんどで、この「アマデウス」のモーツァルトように純粋な変人!奇人など皆無でした。
奇人・変人・自由人、天才モーツァルトの本質をえぐるような、よくぞ映像にしてくれました、の大傑作です。
マリナー、アカデミーの演奏もモーツァルトの孤独・憧れ・自愛・厭世を余すところなく表出した名演揃いです。
新たにこの作品のために録音したようですが、単なる映画のバック・ミュージックを遥かに凌駕した、切れば血が流れそうな程の音の数々です。
特にラスト、雨の中を疾走する馬車の場面に流れる「レクイエム」は、失われつつある真の才能を天が悼むかのような絶望の極みを、映像と音楽が対等に表出した稀有な成果です。
現在、モーツァルトの曲を癒しと表示して販売しているカン違い業者や解説者、教師が多くいますが、聴き続けることで知らずに溜まる毒をタレ流しているようなものです。
モーツァルトの毒を持って世情の毒を制す、その意識を知らず安易に聴き流すと、この毒は、心に染み入り、いつか魂を浮遊させてしまいます。
作品名:たかが映画、されど映画 作家名:しん よしひさ