たかが映画、されど映画
あ・うん(久世光彦版)
2000年TBS監督 : 久世光彦
出演 : 串田和美、田中裕子、小林薫、樋口可南子
脚本 : 筒井ともみ
原作 : 向田邦子
向田/久世をもう一本。
あまりさえない律儀な勤め人(串田)と、山師のように危なかしい一発狙いの人生を生きる男(小林)、そんな中年男二人に想いを寄せられる律儀な勤め人の方の妻(田中)と、ただそれを見つめる山師の方の妻(樋口)。
決して誰も言葉にも態度にもはっきりとは示さないけれど、アナログな風景に匂い立つ風情が気持ちを揺すります。
久世版とことわりがあるのは、これ以前に深町演出の80年NHK版があるからです。
このNHK版は名作でした。
フランキー堺、吉村実子、杉浦直樹、岸田今日子がこれ以上考えられない程の出来を示していました。
それから20年も経ってようやくリメイクされたのが本作です。
久世は当然前作を意識していたでしょう。
前作に負けない程のキャストが揃うのを待っていたかのようです。
そして前作に劣らぬ隙のなさです。
特に田中と樋口が前作と違う味付けをそれも濃く演じ、森繁の絡みも(NHK版は志村喬)作品をまた別の味わいにしてくれます。
NHK版には、娘のさと子(岸本加世子)を中心に描いた後編があったのですが、ここでは前編のみで、もう無理なのですがこの演出で見てみたいものです。
ああ、そうそう金歯役の竹中直人が、いつもの濃~い金ピカキャラではなく、ショボくれた山師に扮しています。
これがなんともハマリ役!
語りはNKH版の黒柳徹子の方が聞きなれているせいか良いです。
89年には東宝で映画化もされています。
その映画版の監督は降旗康男。
降旗さんは何を勘違いしたのか、板東英二、富司純子、高倉健、宮本信子というキャストもバランスの悪いものでしたが、原作の持つ質朴さも失った空虚な一本でした。
作品名:たかが映画、されど映画 作家名:しん よしひさ