たかが映画、されど映画
響子
1996年TBS監督 : 久世光彦
出演 : 田中裕子、森繁久彌、洞口依子、加藤治子
脚本 : 筒井ともみ
原作 : 向田邦子 , 松山巌
音楽 : 小林亜星
亡き向田の脚本や著作を元に、久世がTBSの21時台に年一本の割合で作り続けたTVドラマのシリースものの一本です。、
病持ちの亭主の看病に暮れる石屋の娘と、女房持ちながら別居中の職人との間の恋情を描いたもので、向田/久世の幾多の作品の中でも最も濃蜜な一作です。
離れに住む職人(小林薫)の元へ、踏み板を駆けて渡る田中の表情が、たまらなく愛おしい気持ちにさせます。
冷たい御影石を田中が己の体で愛撫するシーンも、含んだ石を口渡しにするシーンに糸引く唾液の光も、久世のエロティシズム表現の極みのようです。
ラストの突然の終幕も、高まりを引き延ばすことよりそのまま絶えてしまうことを選んだようにさえ思えます。
舞台である石屋の設定も、石屋の親方森繁、彼の亡くした息子の妻、加藤の描き方も、極めて意思の通った筆運びで、もう文藝作品の域です。
このシリーズの放映時間は当時でもホーム・ドラマの時間帯だったはずで、よくも放映出来たものです。
作品名:たかが映画、されど映画 作家名:しん よしひさ