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しん よしひさ
しん よしひさ
novelistID. 17130
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たかが映画、されど映画

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劔岳 点の記

 2009年

監督 : 木村大作
出演 : 浅野忠信、香川照之、松田龍平、宮崎あおい
脚本 : 木村大作
原作 : 新田次郎
音楽 : 池辺晋一郎

 地図作成上の必要な三角点を築くため、当時前人未踏の劒山に挑んだ、測量手たちの苦難を描いた新田の名作を、カメラマンとして著名な木村大作が映像作品としたものです。
香川、浅野ほかキャストも精魂傾けた演技を刻んでおり、原作に劣らぬ素晴らしい映画です。
何よりもさすがなのはその映像美。
深い発色と的確なアングルは、一カットがそのまま一枚の写真になる程の丹精込めた仕事振りです。
久し振りに娯楽性抜きの、文芸作品に接しました。
 と、手放しに持ち上げておいて何ですが、後味がとても悪い。
映像作品を音楽が駄目にした例となってしまっているのです。
音楽担当は池辺晋一郎になっていますが、ここに流れるのは彼の作品ではなく、仙台フィルによる新録のヴィヴァルディ等のバロック期音楽集。
演奏の良し悪しではなく、この厳しい自然に立ち向かう男たちの骨身も凍る画に、何故宮廷BGMのバロックを流せるのか、その神経を疑います。
測量隊が最初の雪崩で埋まってしまう場面に「アルビノーニ」が流れる場面など興ざめしてしまいました。
作品自体は間違いなく最高点に値しますから、映画の音楽など雰囲気だけで重要ではない方には何の問題もないのでしょうか。
でも私は、映画に音楽はとても重要な要素だと考えています。
ここまで、完成度の高い作品に、何故ふさわしい音楽を作り与えなかったのか。
メロドラマではあるまいし、こんなイタリアのヌクヌク音楽で良しとしたのは監督の趣味なのでしょうか。
音楽の力を侮り、たやすく聴いていると、こんなところでしっぺ返しがきます。
昔、フランスの山岳映画「天と地」の日本での上映時に、本来は音楽がなかったのをさみしいからと、日本のプロモーターが木下忠に作曲を依頼して上映館で流し、それを聴いた当の監督が絶賛したという話しを思い出しました。
この「劔岳」に相応しい音楽を作り、載せ変えた版があれば嬉しいのに。