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しん よしひさ
しん よしひさ
novelistID. 17130
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たかが映画、されど映画

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砂の器

 1974年

監督 : 野村芳太郎
出演 : 丹波哲郎、加藤剛、森田健作、島田陽子
脚本 : 橋本忍 , 山田洋次
原作 : 松本清張

 清張の原作を大きく超えた、橋本忍、山田洋次の脚本の力を見せつけた作品です。
原作の一番大きな違和感は、現代音楽作曲家が可聴外周波数帯域で人を危めるという奇をてらった設定でしたが、それを削除し、物語の流れを整え、登場人物・役の配分も組み直し、極めて密度の濃い展開を生み出しました。
 受け入れられることのない父の病をみるために、共に村を追われ放浪を続けた少年が、運命に誘われるように生まれ変わり、新たな人生を歩んでいく。
しかしその運命は、成長した青年に眩い脚光の中で牙をむく。
見事な脚本と硬派な演出と職人芸のカメラの勝利です。
 作品の設定時のハンセン病に対する誤った知識と情報、それ故に患者に行われた国民的な酷い仕打ちも、映像にすることにより、より大きなインパクトになりました。

 気になる点があるとすれば、「列車の窓から紙吹雪...」という新聞のコラムを刑事が目にするくだりです。
この場面はこの作品で唯一、宿命ではなく偶然が作用して流れが変わってしまう場面なのですが、少し急ぎ足になってしまい、僅かに唐突感が残ってしまいました。
 映画館で代議士家族の集合写真を見つけるくだりも、原作ではそこに至るまでの紆余曲折が丁寧に綴られており、時間の制約のせいでしょうが、先のコラム・シーンと共に原作本の方が余韻を残します。
 しかしそれ等さえも、全編を流れる菅野光亮の音楽が、全てを呑み込むようにラストまで運び去ってしまいます。
 原作本を映像化する際のとても大きな指標を示した傑作です。