天使の羽
服のサイズは分からなかったくせに、指輪は即答。
「最初からそのつもりだったんじゃないか」
少年がクスクスと笑った。
「だから!! ……踏ん切りがつかなかったんだよ!」
声を張り上げてみるが、少年はますますもって笑っている。
「行くぞっ!!」
席を立ち、タカヤスが今来た道を戻って行く。それを笑いながら追い駆ける少年。
「なんだよ、しつこいぞ、お前!」
「だって、君……」
クスクスとまだ笑う。
「店まで決まってるんだもん。ひょっとして、どれを買うかも決まってるんじゃないの?」
少年の言葉に、タカヤスが真っ赤になった。
「そうだよ! 悪かったなっ!!」
あんまり可笑しくて眉をしかめながら笑う少年を見て、タカヤスが首を傾げる。
(……誰かに……似てる……?)
「どうかした?」
笑いながら、急に止まったタカヤスを見詰める少年。
「いや、あの……。店、ここだから」
丁度店の前だったのを幸いと、ふと沸いた疑問を振り払いタカヤスは少年と二人、自動ドアをくぐった。
店舗自体、そんなに大きな構えではないが、可愛いデザインリングがショーケースに並んでいる。高価な物が丁寧に陳列されてはいるが、それなりの物も沢山ある。決して、有名店ではない。しかし、センスのいい品物がこじんまりと陳列されていた。
店内の少し端の方のショーケースに迷う事無くタカヤスが歩いていく。
「これ、なんだけどさ……」
少年に、自分の選んだ物をガラス越しに指し示す。
小さな宝石(いし)がひとつ付いているだけの、細目の金のリングだ。
「いいんじゃない?」
「裏に文字とか入れても、引かれないかな?」
“ほら、そーゆーの嫌う子だからさ”とタカヤス。
「喜ぶよ。クリスマスだもん」
少年の言葉に、意を決したタカヤスが店員に声を掛ける。すぐさま寄ってくる店員。
「こちら、でよろしいでしょうか?」
「あの、字を……」
「刻印ですね。かしこまりました」
一礼し、専門の店員を手招き。二人の前に二人の店員が並ぶ。
「お引渡しは明日以降になりますが、よろしいでしょうか?」
流石に、その辺のファンシーショップとは違い、すぐには引き渡されないらしい。
「……明日……」
明日はクリスマス・イブだ。
「いいんじゃない?」