天使の羽
見ていたけれど、知り合いだからではない。興味本位で見ていただけだ。でも、それを知られるのも何かイヤな気がして、慌てて否定した。ふと見ると、しょんぼりと項垂れている少年の姿。何だか突き放したみたいになってしまって、かえって気まずくなる。
「……いや、同い年くらいだなって思って。でもって、ボランティアな奴だなって」
やたらと人助けしてたじゃん? と笑顔を作ってみる。
「なんか、つい、手が出ちゃうんだよね……」
エヘヘと少年も笑顔を見せる。
「何か探してたみたいだけど……。誰かへのプレゼント?」
タカヤスに訊かれて、少年が目を伏せ首を振った。
「忘れ物? ……いや、落し物?」
またもや首を振る少年。
「じゃ、何?」
「分からない」
「は?」
タカヤスの方が分からない。
「何か、見つけなきゃいけないんだ。でも、それが何か分からない」
「何それ?」
「何かをする為にここにいる筈なんだけど、それが何だかわからないんだ」
「……それって……、“記憶喪失”じゃ……」
言いつつ引くタカヤスに、少年はやっぱり首を振る。
「違うと思う。でも、それをしないと帰れない……」
予想もしていなかった言葉に、タカヤスが黙り込んだ。いくらクリスマスでテンションが上がっているとはいっても、記憶喪失だかなんだか分からない……しかも、見ず知らずの……他人に構ってやろうなどという人間は、まずいない。黙ったまま俯いているタカヤスにそっと頭を下げて、少年はクルリと背を向け、去ろうと一歩を踏み出した。
途端。
「待てよ!」
後ろから腕を掴まれて、少年が驚く。
「なんか“当て”はあんのか?」
首を振る少年に、
「手伝ってやるよ」
タカヤスがニッと笑った。
「……でも……」
「ひとりで探したって、“もの”が分からなけりゃどうにもならないだろ? 二人だったら、何か分かるかもしれないじゃん?」
目線が変われば……である。
「時間ならあるんだ、俺」
タカヤスの申し出に、
「ありがとう」
驚いていた少年が笑った。
「ついでに、俺の買い物にも付き合ってくれな」
「君の、買い物?」
「クリスマスじゃん? 彼女に何か渡そうと思うんだけど、何を買えばいいのか分かんなくて……。彼女、いる?」