天使の羽
自分と同じ位の年齢だろうか。白いシャツに白いスニーカー、スーツ……ではないが、上から下までとにかく白の服だ。あんまり白すぎて、一瞬、この世のものではないのかと錯覚したのだ。
「今時、ファッション誌でも、白ずくめなんて企画やらねーぞ……」
呆れながらも、つい目で追ってしまう。驚くべき事は、それが似合っているという事実。
その少年は転がってしまっていたオーナメントを抱え込み、道端にヘタリ込んでいる少女にそれを差し出した。
「あ、ありがとうございます!」
少女が笑顔を返し、荷物を持ち直して去って行く。途中、何度も振り返り、何度もお辞儀をして……。
「ちぇっ!」
なんだか自分の役柄を取られた気がして、小さく舌打ち。それでも、あまりの白さが気になって、つい、目で追ってしまう。
通りすがりの店のウインドウを覗き込んでは、首を振り、溜息をつき、次の店の前へと移動する。
「プレゼント探し、かな?」
だったら、俺と一緒じゃん! と、また、追う。
「あれ?」
少年の傍らには、小さな子供。子供と同じ目線までしゃがみ込んだ少年が、立ち上がると同時に子供を抱き上げる。
「何してんだ、あいつ?」
子供になにやら囁いて、
「トモくんのお母さーん!」
少年が声を上げた。
「トモくんのお母さん、いらっしゃいませんかーっ!?」
そのよく通る声に、反応する周りの人々。そして、
「トモユキ!!」
一人の女性が、タカヤスの横を走り抜けた。
少年の腕の中から、両手を差し出す子供。どうやら、母親が見付かったみたいである。
と、安心したのも束の間、今度は木陰で泣いている女の子に遭遇。またもや、目線までしゃがみ込んで少女の頭を撫でている。
「今度は、何だ?」
過ぎ行く人波に隠れながら、タカヤスが首を伸ばす。
少年は、“待ってて”と女の子にウインクして、すぐ横の木に登り始めた。
「何を……」