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天使の羽

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 赤と緑と金に彩られた街の中、タカヤスは立ち止まった。
 クリスマスを目前にした繁華街は、日曜という事もあって“歩行者天国”になっているのだ。目の前を行き交う人々の手元を見ながら溜息が出る。
「……決まんねー……」
 この日の為に気合いを入れまくってバイトにも精を出した!
 イブの夜には、ホテルでディナーも予約済みだ。後は、当日渡すプレゼント……。
「やっぱ、指輪かな……」
 バラの花束に指輪を添えて……?
 考えて、“イヤイヤ、待てよ”と首を振る。
 メガネの似合う彼女は、派手な事は嫌がるタイプだ。好きな色はオレンジ。テーマパークでのデートより公園への散歩デートの方が好きと、サラサラの髪をなびかせて笑っていた。
「……指輪は……派手、かな?」
 付き合い始めて半年。でも、今までのどの娘より、一緒にいると安らいだ。だから、真剣なんだと伝えたい。
「う〜ん……」
 一緒に買い物をすれば手っ取り早いのだが、きっと、『何もいらない』と首を振るだろう。普段ならそれでもいいけど、今はクリスマスなのだ! 二人で過ごす、初めてのクリスマスなのだ!! ……と一人、歩行者天国となった道路で気合を入れるタカヤス。“クスクス”と笑い声が聞こえて、慌てて“ガッツポーズ”をとっていた手を引っ込める。行き交う人の視線をキョロキョロと確認し、笑っていた人達に逆に照れ笑いを返す。
「ちぇっ……。笑われちゃったよ……」
 恥かしいのを誤魔化すかのように呟き、歩き出す。と、
「キャッ!!」
 人ごみの中、すぐ傍にいた少女が荷物ごと転んだ。誰かがぶつかったらしい。両手いっぱいに持っていた荷物が、一瞬にして歩行者天国の道路に散らばっていった。
「やだ!」
 散らばった荷物は、ツリーに飾るオーナメント達。慌てて手繰り寄せるが、丸みのあるものがその手をすり抜けて転がって行く。他の荷物で身動きの取れない少女は半ベソである。転がる赤や緑の丸いオーナメント。その内のひとつが、タカヤスの足元に転がってきた。拾おうかと思った瞬間、しなやかな手が伸びてきて、オーナメントを包み込むように持ち去った。
「え!?」
 ビックリして見上げた先に、真っ白な人影が目に入った。
「ゆ、幽霊!?」
 驚いて目をこすり、歩いている正面の影を凝視する。
「……人……?」
作品名:天使の羽 作家名:竹本 緒