変色
「もしもし? 実はあの後ひとつ分かったことがあります。大した事ではないかもしれませんが一応お伝えしておこうかと。今あなたのいるところから木は見えますか? 落葉樹です。あの葉の色を見てください。そうです。あなたの肌の色と同じなんです。それだけじゃなくあなたの肌の変色の進行は紅葉と全く一緒だった。あなたが来るときにいつも外のカエデを眺めていましたが今思い返してみるとあなたの肌とカエデの葉の色はいつも同じだった。いいですかこれから言うことは今の事実から考えたただの仮設です。単なる作り話として聞いてください。あなたは落葉樹とともに紅葉していった。そして今は完全に赤くなっている。だけどその先は? 紅葉しきったら後はどうなります? そうです。葉は落ちます。そうなるとあなたは一体どうなるんでしょう? ……すいません。確証が無いことを喋りすぎました。大体何故あなたがそんなことになったのかなんて事もいまだに分かりませんしね。気分を悪くされたとしたら謝ります。ただ私はできるだけあなたの力になっておきたかったんです」
そこまでいって留守電は切れた。
葉の色と俺の肌の色が一緒だと? 窓から通りのカエデを見ると確かに俺の肌と同じ色をした葉が生えていた。しかも冬を前に葉はほとんど落ちて不恰好な枝を見せ付けている。
医者の言ったことがもし本当だとしたら。しかし本当にそうだったとして俺にどうしろと言うのか。医者は最後までは言わなかったが、もし葉がすべて落ちれば俺は死ぬのだろうか。原因も分からずただ時が過ぎるのを待つほか無いのだろうか。
その時俺はふと変色に気付いた日のことを思い返した。もしかするとあの時のことが原因かもしれない――。そう思ったがにわかには信じがたい。やや迷った挙句俺は外に走り出た。あの日、俺はストレスを発散させるためにお化けモミジを傷つけていたのだ。