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蛇の目

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三朗さんの件で、この土地にも整えられた道路を作らねば
それが、政界への進出の原動力となった、と伺っておりますが。
「それだけじゃねェ。ほかにもいろんな問題があった。
部落差別の問題?治水事業の問題?農協が恐れて手も出せんかった問題?
いろいろあってさぁ・・。
んまぁ、表向きはさぁ、<ヒメゴコロを全国に!>
って、ことさぁ。」

「ここはぁ、こんな山奥だからぁ、誰も見向きもしないのよォ。
ここらの農民はさぁ、戦後復興にもオリンピックにも
田中角栄の列島改造論にも乗り遅れたんだわ。」

「アイツぁ、自分のところばかり、道路作ってぇ、ダム作ってぇ、
新幹線まで引いたのにさ。山っこ、ひっとつ跨いだここいら辺りのことぁ、
見向きもしなかったっぺ!お陰でよ日本で一番の極貧の県でさ。
そのなかでも一番の極貧の地区にされてさぁ。」

「田中角栄、云うたらぁよ、アレん残した言葉があってっぺぇ。
“約束したら、必ず果たせ。できない約束はするな。
ヘビの生殺しはするな。借りた金は忘れるな。貸した金は忘れろ“ってヤツ。
ありゃぁ、自戒の句ですよォ。本人が守れんかったっぺ。
ここいらのもんは皆ぁ、生殺しにされたっぺぇ。」

「信じられんだろ、ここいらぁ昭和の末期まで戦後のままだったんさぁ。
三朗さんのお陰でさぁ、ヒメゴコロがモノになったから、良かったモンで
それもなけりゃぁ、銭がこの田舎まで回っちゃァこんかったっぺ。」
作品名:蛇の目 作家名:平岩隆