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蛇の目

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1970 年代後半から村議会、80 を超えての御高齢ながら、
県議会に出られました。
山本権造はニヤニヤ笑い出した。幸造ももらい笑いしている。
「・・え?私が生まれたからだ、と云ってますわぁ」
「お恥ずかしながら、還暦過ぎて、銭が回ってきて、
嫁も世話してくれる人が出てきて。初めて我が子を持って。
考えてもみれば、ようやくそのころになって、そのぐらいの余裕が持てた。
その前の半生などは、働き詰めで、食うや食わずだったしねぇ。」

奥様とは30 歳ほど違うとお聞きしてますが。
「恥ずかしながら、そういう風の吹き方だったんでしょ。
と云ってますな。」
権造は、モニョモニョと口を動かすと、幸造は笑った。
「私ンために、ひとはな咲かせンと、思ぅて?」

「それまでぇ、わたしら農民の味方の振りして、
散々借金で苦しめてきた農協への怨み辛みもあってでしょ。
ヒメゴコロで銭が回ったら、急にヘラヘラしよってでしょ。
余所じゃ、減反じゃ云うててもですよ、ヒメゴコロは別格でしたから。」

減反政策に反対だった?
「いやぁ、売れるものは、たくさん作って、高く売らなきゃダメでしょ。
農協はそういうんで。この際、銭のあるうちに農協を利用してやろうって
権造さん、考えてですよ。」

「権造さんはね。ヒメゴコロの等級を作ったんだ。
三等級は、ダムの周りの田んぼ。二等級は川向こうの田んぼ。
此処、玄戒のものだけが一等級。味も全然違う。二等級、三等級は増産です。
逆にここの一等級はブランド維持のために減反です。
ここのもんと、ここを訪れたひとたちと、極限られたルートのお方にしか
本物のヒメゴコロ一等級は、出していませんって。」
作品名:蛇の目 作家名:平岩隆