放課後の住人
頭を撫でる感触がした。
なにかいい夢を見ていた気がして、その手にすり寄り、田辺は違和感に気づいた。
「よ!」
目を開けると目の前に人気者の生徒会長さまが目線を合わせるようにしゃがみこんでいた。
「終わったのか」
「ま、ね。俺サマ、有能だからね」
「あ、そう」
興味なさそうに相槌を打ち、田辺はあくびをした。まだ少し眠い。
「そろそろ屋上も寒いんじゃない?」
「別に」
「居眠りはヤバいと思うけどなあ」
「先に帰っていいなら、」
「それはダメ」
真面目な顔で即答され、田辺は「あ、そう」と適当に応えた。
気づかうようでいて、結木が田辺の提案を受け入れることはほとんどない。
「ならさっさと行こうぜ」
言われなくても、秋の声が聞こえ始めたこの頃、屋上で長時間を過ごすのは寒い。
さっさと用件を済ませて帰りたかった。
先に立って歩き出した田辺の背中を温かい何かが覆いかぶさって来る。
「冷え切ってる。中で待ってればいいのに、強情だね」
「余計なお世話だ」
「うん。ごめんね」
冷え切った首筋に温かい唇の感触を感じて、田辺は視線を落とした。
やっぱり結木は苦手だ。