放課後の住人
試験前でもない図書室に人は疎だ。
人気者の生徒会長が顔を出し出したところで気づく相手もいない。
結木は目だけでざっと図書室を探し、窓際の定位置にいる藤堂の机にやって来た。
「相変わらず美人だね。図書室の佳人サマ。勉強好きだね」
「そうでもない。田辺なら来てないぞ」
「じゃ、まだ屋上か。寒くないかね、あいつ。菊ちゃんからも言ってやってよ」
「俺が言ったら嫌がるんじゃないか。
・・・結木。遊びなら、いい加減、田辺を解放してやれ」
「菊ちゃんがオレのところに戻って来るなら、考えますよ?」
「イヤな奴だな」
「そりゃ、これでも必死なんだ」
藤堂は目を逸らし窓の外を見た。寒そうな屋上が見える。
「風邪ひかせるなよ」
「もちろん」
軽い足取りで出て行く結木と入れ違いに、矢部が藤堂を迎えに来た。
陸上部の彼だが、インハイも終わり半分引退したようなものだ。
「待たせてごめんね」
「勝手に待ってるから気にするな」
「結木でも来た?」
こくりと頷き
「ちょっと充電」
矢部の胸に、藤堂は頭を預け目を目を閉じた。
すぐに矢部の手が頭を撫でる感触がした。