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ハイエースの旅人

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 二上山万葉ラインは適度なワインディングが楽しめる短い山道だった。
 展望台と思われる場所を何ヶ所か通り過ぎると、広々とした駐車場にたどりついた。駐車場の脇には「高岡二子山キャンプ場」と書かれてある大きな看板があった。どうやら到着したようだ。
 一旦、バイクを降りて周囲を歩いて見て回ることにした。
 ウッドコテージが木々の間に数棟あり、区画整理されたキャンプサイトが何ヶ所も設営されていた。ざっと見て周ったところ、キャンプをしている先客は一人もいない。これだけの敷地を選び放題とはなんという贅沢だ。しかも、看板の地図をみるかぎりでは、駐車場からさらに奥にもう一ヶ所、こちらにはフリーサイトが設けられているようだ。案内板を頼りに続けてそちらへ歩を向かわせた。
 これはこれでまた広大なキャンプ場だ。整備された芝生のサイトをぐるりと囲むように、車がすれ違える幅のアスファルトの道が作られていて、芝生へ乗り物を乗り入れなくとも、すぐ隣に車を駐車しておけるようになっていた。トイレも奇麗だった。屋根つきの炊事場も中央がコンクリートのテーブルになっており、そのままバーベキューパーティが始められそうな作りだ。
 これで本当に無料なのだろうか? 自分以外にも、誰もがそう疑ってしまいそうなくらいの充実した設備のキャンプ場だった。
 案内板には特に連絡が欲しいなどの書き込みは無かったが、一応、ツーリングマップルに載っていた問い合わせ先の管理事務所に電話をかけた。

『はい、二上山公園管理事務所ですが』
 女性の声。繋がった先は公園の管理事務所だった。
 早速、キャンプ場の利用の件を問い合わせてみると、駐車場横のコテージと区画整理されたキャンプサイトは予約制の有料、芝生のサイトはすべて無料だという。もしも有料施設を使いたいのなら、事務所へ顔を出し、記帳を済ませてほしいとのことだったが、無料サイトを使うと伝えた。とは言っても、誰もいない貸しきり状態。広大な敷地を目の前にして『区画サイトへ張ってしまおうか?』なんて考えも、一瞬頭をよぎったが、よくよく見てまわると、芝生のサイトの方が少し利便性はよかったのでそちらへ張ることに決めた。ここまで来て不正だなんてみっともない。

作品名:ハイエースの旅人 作家名:山下泰文