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ハイエースの旅人

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 富山に来るのは二回目になる。数年前に電車での一人旅でこの地を訪ねてきたことがあったのだが、こうしてバイクの免許を取った後に自走でたどり着いたことには感慨深いものがあった。福井~石川経由で周ってきたあの時とは、目に見える景色もまったくといっていいほど違っていた。単なる記憶違いなのかもしれないが、新鮮であることにはかわりはない。それでいいのだ。
 市内へ向かうのには農道を使った。農道。浜松ではあまり聞かない言葉だ。てっきりトラクターや耕運機専用のような、よっぽど細い道路なのかと思っていたのだが、何のことはない普通の一般道路で、交通量の多い国道をパスできる便利な道路だった。前述した魚津市に住む友人から「市内に入ったら農道を使いなよ」とあらかじめメールで情報をもらっていたのだが、なるほどこういうことか。現在地を地図で確認できない不便さはあったが、それを補ってもあまる時間の短縮になった。
 射水市内を農道でパスして高岡市へ入る。ループ橋のようなバイパスに乗り、氷見街道に入った。ここから今日のキャンプ地「二上山キャンプ場」へ向かう。
 四国や北海道と違い、本州でキャンプ場を探す場合、事前に下調べをしておかないと直前になってキャンプ場がない、などと痛い目を見ることが多い。これは都心部に限ったことではないのだが、ここ、高岡市にはキャンプ場がそれなりに点在していて、ツーリングの拠点としてはうってつけの場所だった。しかも、調べたところ二上山キャンプ場は利用料が無料だ。タダより安いものはない。
 広々とした氷見街道を北上していくと、ガソリンスタンドとの交差点に「二上山万葉ライン」の案内板を見つけた。ここを昇っていけばキャンプ場があるはずだ。登る前にまずは給油をすませておく。これをしておかないと早朝からの行動に支障が出てしまうのだ。
 給油ついでにスタンドの店員さんから銭湯とスーパーマーケットの情報も聞き出すことができた。テントを張った後に徒歩で行ける場所がベストだったのだが、どうやらどちらも車で十分くらいはかかるそうだ。
 風呂に関しては、必ずしも「入らなければ耐えられない」という性格ではないのだが、さすがに九時間以上の移動は体にこたえていた。願わくばゆっくりと熱いお湯に浸かって疲れを取り、飯を食い、酒を飲み、幸せな気分のまま、泥の様に眠りたい。

作品名:ハイエースの旅人 作家名:山下泰文