小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

恋するワルキューレ 第三部

INDEX|34ページ/56ページ|

次のページ前のページ
 

今時のJKでも見せないであろう恋に迷い性に恥じらう乙女の姿は、裕美であっても十年前であれば許されただろう。だが二十台でも後半に差しかかろうとする女性が決して見せて良いものではない。見られたら同情と憐れみから誰しも涙を流すだろう。
 しかもそんな裕美の視線の先にあるものは、昨日裕美が舞のお奨めにより山と買い込んできたランジェリーの数々だった。もはや何と声を掛けるべきなのか、誰しも言葉に詰まるに違いない。
 そしてそのランジェリーも普通のそれとは訳が違うものだから、目のやり場にも全く困ってしまう。
まずショッキング・ピンク色の光沢が輝くブラとショーツ。ノーマルなデザインだがピンクの光沢が実に眩しい。
白地にルージュやピンク、オレンジといった可愛くも鮮やかな花々が彩られたブラとショーツ、それにキャミソールのセット。
ロードバイクのジャージの下に着るための、淡いピンクの生地に紫色のラインが入ったキュートなスポーツタイプのブラとショーツ。
 昨日、裕美は舞にエリカとの恋のバトルについて相談したのだが、その結果がこの下着の数々だった――。

恋について百戦錬磨の舞なら、きっとエリカに負けない女の武器を授けてくれるに違いない! “彼”の心を取り戻す魅惑の魔法を教えてくれるかも知れない。そんな藁にもすがる思いで、“恥”の一字を忍び舞に相談したのだ。
「センパイもやっと“その気”になってくれたんですねー! わたしも女として嬉しいです!」
内心、舞にからかわれるのではないか? 笑われるのではないか?とビクビクしながら相談したのだけれど、舞はそんな素振りは何一つ見せず、裕美の“成長”と“目覚め”を心から祝福してくれた。
「大丈夫です! わたしに任せて下さい! 絶対、店長さんを虜にするファッションをチョイスしてあげます!」
「本当!? 舞、ありがとうーー!」
「ええ、それじゃ早速今晩行ってみませんか? わたしが良く行くお店が近くにあるんです!」
「うんうん。行く行くーー!」
舞の提案に裕美は直ぐさまに飛びついた。しかし舞に相談して良かったーーと、裕美が安心したのもつかの間。裕美が連行された先は都内でも有数の大きさを誇るランジェリー・ショップだった――。

「ちょ、ちょっと舞!? どうしてランジェリー・ショップなの? わたしはカワイイ服をお願いって相談しただけなのに!?」
「えっ? でもそれって――、つまりあの店長さんに気に入られるための服が欲しいんですよね?」
「ええ、まあそうだけどーー、そんな下着みたいに直球的なものじゃなくてーー!」
「だったら下着以外ないじゃないですか? 男の人に喜んでもらうのにどうして服なんか必要なんですか?」
「舞ったら、ちょっと論理が飛躍し過ぎよーー! 確かに“彼”に喜んで欲しいけど、だからって下着を見せる訳にいかないじゃない!! ロワ・ヴィトンじゃなくて、男の人が可愛いって言ってくれる服が欲しいの!」
「センパイ、何を仰ってるんですか? だったら下着以外ありえないじゃないですか?」
「だから舞が着てる服みたいに可愛いのが欲しいのよーー!!」
「えーー? ですからーー!」
こんな調子で二人の話は一向に噛み合わない。舞は裕美の言わんとすることが理解できずキョトン??とした顔だ。その後舞は渋い顔をしつつ、しばらく考え込むと何か分かった様に、パン!と手を打った。
「ああ、なるほどーー! そうゆうことだったんですねー!?」
ようやく裕美の言いたいことが分かったらしい。
「センパイ、ちょっと失礼しますね」
そう言うと舞は突然裕美のブラウス引っ張り、裕美の胸とブラをじーっと覗き込んだ。
「うーーん、ベージュのノーマルタイプのブラですかーー? あまり宜しくありませんね――」
「きゃああぁぁーー!! ちょ、ちょっと、舞! 何をするのよ!?」
 裕美はとっさに舞の手をはね退け胸を隠した。いくらランジェリー・ショップの中で女同士とは言え、胸と下着までジロジロと見られては堪らない。恥じらいもあれば回りの目だってある。
しかしそんな慌てふためく裕美を他所に、舞は子供に優しく言い聞かせる様に裕美を嗜めるのだった。
「先輩、ダメですよーー。先輩はアウターはちゃんとした服を着ているんですから、下着もそれなりの物を着ませんと女の価値が下がりますよ。内面に気を使わない女だと思われちゃいますよーー」
「だ、だからって下着までチェックすることないじゃない! 別に今日……、彼とその……するとかしないとかの話じゃないし……」
「そんなことは許されません! 下着は女の武器です! いつ男の人に見られても恥かしくないものを着なくちゃイケないんです。下着を見せるか見せないかで女の価値は決まるんですよ!」
「そんな、舞! 下着で女の価値がなんて、何を言っているのよーー!? そんなことある訳ないでしょ! それにわたしが欲しいのは下着じゃなくて――」
 裕美の言葉を遮る様に、舞がノンノンと小さな指を振った。
「センパイ。ちょっと思い違いをしてますよ」
「えっ? “思い違い”――?」
「先輩の仰りたいことは分かりました。ロワ・ヴィトンみたいにお堅いイメージの服じゃなくて、もっと男の人にに好感をもたれる服が欲しいんですよね? だから先輩が今欲しいのは下着じゃないと」
「そうよーー! そんなの当たり前じゃなーーい!」
「それが思い違いだって言っているんです。じゃあ先輩に質問をしましょう。どんな服が男の人に喜ばれると思いますか? 例えば白いレースとフリルを芳醇にあしらった乙女路線ですか?」
「それはちょっと……。確かにそうゆうのって男の人は嫌いじゃないと思うけど、この歳で流石にそんなロリータファッションなんて……。そこまでは行かないにしろ、わたしでも着れるカワイイ服を……」
「じゃあ“彼”どんな服が好みなんですか?」
「そ、それは……、わたしもそこまで彼の好みを具体的に聞いた訳じゃないし……」
「でもセンパイはエレガントさも欲しいんですよね? エレガントさとカワイイさって相反するものですし、バランスを取るのは難しいですよ? その辺りも男の人の好みに寄りますからかなり微妙です」
「それはそうだけど……。でもだからあなたに相談したんだけど……」
「でもゴージャス路線ならロワ・ヴィトン・グループのブランド以外ありえませんよね? それ以上派手にするとなると小悪魔系キャバ嬢みたくなっちゃいますよね? もう他にどんなブランドがありますか?」
「そうなんだけど……。わたしには思い付かなかったんだもん。だから舞なら何か良いブランドを知ってるかと思って……」
「だから思い違いをしてるって言うんです。男性に好まれる服はカワイイ路線とは全然関係ありまえんありませんよ!?」
「えっ? それじゃどんなファッションが良いの?」
「だからセンパイ、下着ですってばーー! どんな男性も女性の服になんか興味がないんですよーー! 服やブランドで攻めるっていう考え方自体が間違っているんです!」
「だって……、男の人だって女の子が着る服を『よく似合ってるね』って褒めてくれるじゃない? それって全部ウソなの?」