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完結してない過去の連載

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魔界通り








「家出人募集中」
変なチラシが電柱に貼ってあった。
私は黙って引き剥がし、ポッケに入れた。
もしかしていつか必要になる時が来るかもね、なんて思いながら...。



母さんは悪くない。
でもやりきれなかった。
腹が立って仕方がなった。
私は今井友菜。16歳。
父は浮気して出て行った。
母はその日からやけにヒステリックになった。
その様子があまりにも痛々しくて可愛そうだった。
そんなある日、「こと」は起きた。
「ばかばかばか!!!」
母が父の写真に向かってクッションを投げつけた。
「やめなよ...」
いつもの事だったのに!
そう、あの時母をなだめようとした私が悪かったのだ。
「なによ!あんたまで私を責めるのね!!」
母はまたクッションを投げつけてきた。
『パリンッ』
私達家族にとって唯一の思い出の品が砕け散った。
去年の春、最初で最後の家族旅行に行ったときに父に買って貰ったマグカップが真っ二つに割れてしまった。
私は二階に上がり鞄をつかむとウチを出て行った。


「地図だとここらへんなんだけどなぁ..」
あのへんてこな広告が示しているような豪邸はどこにも見当たらない。
そのときだった。
急にザァッッと一陣の風が吹いたかと思うと目の前にはグレーの髪の毛をした長身の男が立っていた。


「魔界通りにようこそ、今井友菜様」
かっこいい。
でも..しいて言えば、我を忘れてってほどではない。
んーん...
なんて言えばいいのかな?
「私これからこの人の所で働けるんだ!」
って感じかな?
「どうしました?」
「あっ、いえ..あの、魔界通りって変わった名前ですね」
「あぁ...」
その人はなぜか意味ありげに微笑んだ。
「魔界通り、すなわちそこは天界・下界・魔界を行き来するための世界に一つしか存在しない通路です 。そしてお分かりかもしれませんがこの三つの異世界の中間地点が下界となります。そうなると天界魔界の者が下界を通るのは当たり前のこと。そこで私は下界であって魔界通りであるここ、ちょうどこの地点にホテルを建てることにしたのです。」
「...」
私が馬鹿だった。
家出人を引き取ってくれるところなんてこのご時世そうそうあるわけがない。
「あの!ふざけてるなら帰ります!!」
「いたって真面目ですが?」
にこっとその人?は微笑む。
あぁやめて...
そんな笑顔で見つめないで...
どきどきしてしまう..
え?
なんで??
『バタッ』


「あ 起きた!」
フリルのスカートを着たフランス人形が笑っていた。

「なっ!なっ?!...っ」
「あぁごめん!」
そう言うとフランス人形はどんどん大きくなっていってついには人間サイズになった。
「こっちのが怖くないでしょ??」
「あ..はい...」
確かにいくらかは不気味さが無くなったが異様なのには変わりはない。
「私の名前はライヤ!よろしくね」
「はぁ...友菜です..」
「私達のご主人様の名前はズン。怒らせるとちょー怖い。そんでもって、も一人使用人がいるんだけどね...それがまた怒らせると...」
「友菜。」
冷りとした声がした。
後ろには真っ黒な長髪の白い着物を着た美女が立っていた。
そう、それはまるで...
「私は雪子。ズン様にこれを運べ。」
「ははははははいっっっっ」
雪子は部屋を出て行った。
「...ごめんねぇ..あれが雪女の雪子。もうまんまの名前でしょー?」
「あの..どうして怒って...?」
「あぁ、あれはいつもの事なんだけどね、実は..雪子はズン様が好きなのよ。だからいつも雪子がズン様に食事を運んでるんだけど、友菜に運ばせろって言われてすねてるわけ。」
そっか..
雪子さんはズン様が好きなんだ...
なんでもやもやするんだろう...
てゆうか雪女を平然と受け入れてる私も私だけど...
「って!え?!この赤いグロテスクな変な物体が食事?!」
「へ?言ってなかった??ズン様は妖怪の中の大妖怪、吸血鬼だよーん!!」
(だよーんって??!!)
この仕事...やめたくなってきた...
作品名:完結してない過去の連載 作家名:川口暁