完結してない過去の連載
「ー…それは今まで伝説上のものとされてきた島、『リン』が確かにあったことが証明された瞬間だった。私は興奮と緊張で顔がほてってきた。リンは、リンは本当にあったのだ。実在したのだ。いや、そればかりかまだ今でもどこかで男達が暮らしているのかもしれないのだ。ー…」
国語の先生が教科書を読んでいる。
やけに感情を込めて。
少女はぼーっと何を見るでもなく外をむいていた。
彼女は恐ろしいくらいの美少女だ。
誰も知らないが、彼女は髪を黒に染め、カラーコンタクトで目を黒く見せていた。
彼女自身は何故自分がこんなことを初めたのか知らなかった。
物心ついたころから養護学校の先生にそうされ、また中学生になった今でも自分で染めている。
ただでさえ目立つこの容姿が、日本人の友人達の中でさらに目立つことを恐れたからだ。
しかしそれは大きくなった今だから言えることであって、何も記憶にないような小さな頃からそんな格好をさせられていた理由が彼女には思いつかなかった。
幸い片方の親はアジア系だったらしく、髪と目の色以外はさほど周りと変わらなかった。
身長もいたって普通である。
しかし、なぜか彼女の周りにはいつも気品が満ち溢れていた。
「凛~!さっきの授業超眠かったね。私よだれ垂れてなかった?」
「よっちゃんはよだれ垂れてても可愛いよ。」
「もーッ真面目に聞いてるのにっ」
彼女には、敵も味方も多かった。
ちなみにこの『よっちゃん』という女は一応友達に入る。
しかし、端から見ると彼女の『敵』である人物であっても彼女にとっては敵でもなんでもなかった。
ただ嫉妬や憎しみといった醜い感情を押し付けてくるだけの下等な生き物でしかなかったのだ。
彼女はどこかでもっと強い憎しみを感じたことがあった。
背中がぞくりとするような殺戮を感じとったことがあった。
…しかしそれはあくまでぼんやりとした感覚的な記憶であって、はっきりとした記憶ではなかった。
「そういえば凛、今日誕生日だっけ?」
「うーん。誕生日って言っても施設に預けられた日、だけどね。」
「そっか…。でももう15歳ってことだよね!かっこいいね!」
「なにそれ~!よっちゃんポジティブシンキング!」
二人で笑いあっていると…
ドンッ
教室のドアを誰かが蹴破った。
その瞬間彼女は急にぞくぞくした。
この感じ。
はるか昔に感じたこの気持ち!!
「なっ何?!」
昼休みの教室がざわめきたつ。
背の高い真っ黒なスーツの男が立っていた。
「リン。誕生日おめでとう。迎えに来たぜ」
作品名:完結してない過去の連載 作家名:川口暁