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完結してない過去の連載

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美涼は、着物を脱ぐと墨を持ってくるよう頼んだ。




パタパタと足音をたて、女が部屋をでていく






「…」



スーっ

襖があいた

「母さんまた柚ん家の犬公が…」


歳は16、7ぐらいの青年が入ってきた。



「うわっ!」

明らかに動揺している。


「おまっ…お前ちゃんと着物着てろよッてゆーか誰だお前…」



「美涼」

美涼は、着物を少し上に上げ、体を隠しながら動じずに答えた。


「み…りょう?ふーん変わった名だな。俺は樹音(じゅおん)。わっ悪かった、客人がいるとは知らなくて」




「…」


「なんだよじろじろみんな!」


「綺麗な瞳」



「なっ…」


真っ赤になる樹音…



「雨師様!おまたせしました」


女が入ってきた。


「…っこれ樹音!なに入ってる!!」


「今…母さん雨師様って…」



美涼がすっと手を挙げた。


「まだ雨師ではございません。」


「しかし、今から式をあげると…」




「おいちょっと待て」


樹音が顔を引きつらせながら制した。



「誰が勝手に俺の見つけた龍をやると言った?」

はーっと女が大きな溜め息をついて言った。


「まだあんたはそんな事言ってるのかい?確かに卵を見付けてきたのはあんただよ。だからと言って雨師になれるのと違うんだから」



「…んなのわかんねぇだろ!!」


樹音が怒鳴り返す。



「呪怨さん…」


「樹音だよッんな怨念のこもった名前なわけねぇだろっ」



「…あなたは、雨師になりたいのですか?」



「…悪いかよ。」




「…雨師は、そんなによいものではありませんよ」



「は…?」






ピキッ


奥から微かに音がした。


「…いけない」


美涼の目つきが変わる。


「産まれてしまう。」


作品名:完結してない過去の連載 作家名:川口暁