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恋の掟は冬の空

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横で 前で


「これって、いいね」
「いいけど、こんな人いるのかなぁ・・」
ベッドの上で横並びで、入院患者と一緒にご飯食べてる人って聞いたこともなかった。
「でも、ちょうど2人なら小さいソファーぐらいだね、横並びってやっぱりいいね」
「ま、病院最後の夕飯だから いいよね」
「うん、見られたら少し恥ずかしいだけかな・・」
肩と肩があたってたけど、おいしい お弁当とお惣菜をぱくついていた。
「おこわって 直美も炊けるの・・」
「えっ やった事ないけど、出来ると思うよ、今度炊いてみようか・・」
「うん、食べてみたいなぁ」
「つくったことないから、本屋さんで立ち読みしちゃうかもだけどね・・」
「読まなくても出来そうだけど、直美なら」
「うまいねぇー なんか」
くっついていた肘で左腕を小突かれていた。
「このギブスって、いつぐらいにはずすんだろうね、聞いた事あるの 劉・・」
「はっきりは わからないけど1月中には取れるんじゃないかなぁ」
「そっかぁ いっぱいサイン増えちゃったね」
「直美が1番多いんじゃないの、理由つけて書いてるから・・」
「今日も ここに日付入れて ベッドでご飯って書いちゃおうっと」
「意味不明だけど、それ」
「いいのよ 私が後で見て楽しけりゃ・・足からとれたら部屋に飾って置くんだから、綺麗にとってもらうように山崎先生に言っておかなきゃ・・」
「中ってけっこう 汗だらけなんだけど・・」
「綺麗にして 干しとけば平気だって」
食べながらの話題じゃなかったけど 直美も俺も笑っていた。
「うーん、おなかいっぱい・・あとは劉食べちゃって」
「うん、食べちゃうわ」
おこわが少しと お惣菜が少しだったから、すぐに食べ終わりそうだった。
「お茶いれるね、日本茶でいいよね・・」
「お湯まだあるかな・・」
「大丈夫みたいだよ、入れちゃうね」
ベッドから降りてポットを持ってお茶を入れてくれていた。
「はぃ、熱いから気をつけてね」
お茶をベッドの上の小さなテーブルに乗せながら、また、ベッドに上って左横にくっついてきていた。
「そんなに くっつかなくてもだけど・・」
「だってさぁ、 昨日の寝る時からね、劉の横にくっついて、ご飯食べようって決めてたんだもん」
「明日でもいいのに・・」
「そういうもんじゃないんだけどなぁ・・劉だってうれしいでしょ」
「かわってて面白いや、この並び」
「あっー すごくうれしいって顔だすけど・・」
食べ終わった容器を片付けながらまた、肘で小突かれていた。
「あっ、お昼に、麗華さんがお見舞いに来てくれたんだ」
「うん、電話昨日かけたら、隼人さんといこうかなって言ってた。なんか報告あったでしょ・・」
「それがさぁー」
「結婚しちゃうんでしょ」
「えっー 聞いたの・・」
「聞いてないよぉ、でもなんか言いたそうだった、当たりでしょ」
「なんでわかるのよ・・」
「うーん わかっちゃうわよ、電話で言いかけたんだけど、劉から聞いてねってなんかうれしそうなのに恥ずかしそうだったもん、麗華さん、途中で話やめるなんて初めてだもん」
「すごく、びっくりしたけだけど、俺は」
「そうかぁ、なんかそんな気がしたんだよねぇ、すごいでしょ」
お茶を飲みながら にっこり笑われていた。
うれしそうな直美に、並んでお茶を飲みながら、お昼に麗華さんから聞いた話をそのまま 伝えていた。
「素敵だね、隼人さんも麗華さんのおとうーさんも・・」
「うん」
うなづくと頭を肩に預けてきて甘えていた。触れていたい夜のようだった。


「夕子にはきちんと昨日伝えといたよ」
「あ、ありがとう、後で持って行かなきゃ・・」
「いかなくても、あの子なら、きっともうすぐやってくると思うよ、夕方に直美来るの知ってるし・・今頃ナースに直美さん来てますかって聞いてるかな・・」
「うん、そうだね、今すぐにでも来そうだね・・」
近くで顔を見合わせていた。
「失礼しまーす、柏倉さん、直美さん いますかぁ・・」
タイミングが良すぎて、また顔を見合って笑っていた。
「いるわよー 夕子ちゃんでしょ」
「あ、直美さん、いましたねー あれ、カーテン開けちゃいますけどいいですかぁ」
もう、足元の閉めてあったカーテンの向こうから声がしていた。
「うん、開けちゃっていいよぉ」
直美がベッドの上から返事をしていた。
「はぃ おじゃまします。うわぁ・・」
車椅子に座った びっくり顔の夕子が声を出していた。
「夕子ちゃんも、ベッドに上がっちゃう?」
「えっ 上がってもいいけど、ここですよね」
ベッドの足元を指差していた。
「こっちは ダメよ、直美の場所ですから」
「えっー」
「彼できたんでしょ、その彼と横に座ってね」
2人で、冗談を言い合って笑っていた。
「ほんとに上がっちゃいますよ、ここに・・」
「いいわよー 手伝ってあげるね」
「はぃ」
直美の手を少しだけ借りて、ベッドの上に夕子まで上がって座り込んでいた。
「はぃ、遅くなったけど夕子ちゃんに、クリスマスプレゼントね」
「すいません ありがとうございます、開けちゃいますよ・・」
「うん、それして大学の試験に行ってね」
「わぁー、ありがとうございます、かわいいです」
リボンの付いた包装紙を開けると、かわいい手袋だった。
「それと、これはあげられないけど、貸してあげるね、約束したもんね、いいよね 劉」
「あ、すいません 大事にお借りします」
目の前に出てきたのは お守りだった。
「これね 劉がお正月に買ってきてくれたお守りだからね」
「あ、ほんとだ・・」
湯島天神に行って買って直美にあげたおそろいのお守りだった。
「柏倉さん お借りしますね」
「うん、いいけど、新しいのも買いなさいね」
「これで 充分です」
赤いお守りを大事そうに手にしていた。
「たぶん、このお守りで、20点多く取れそうな気がします・・」
「うんとね、15点ぐらいかな・・」
直美がうれしそうに答えていた。
 
ベッドに3人が乗って、不思議な感じだったけど、楽しい時間だった。
もちろん、足元の向こうベッドの上の浩君は なにをやってるんだかって顔で見ていた。

作品名:恋の掟は冬の空 作家名:森脇劉生