恋の掟は冬の空
なぜか 話して
「きちんと夕子は受験勉強はしてるの・・」
「してますよー 午前中はずっと必死な顔でしてますから。午後もですよー」
「なら、いいけど、直美ががんばるように言ってたからさ・・また明日わからないところは教えてもらいなよ」
「デートのじゃましちゃいますよ、いいんですか」
うれしそうな顔でこっちを見ていた。
「いいよー 明日の夜がここの最後だからね」
「えっ、もう、そんななんだぁ・・そうかぁー いいなぁー 明後日は日曜日なんだ・・」
車椅子の背もたれに体を預けながら、ため息まじりになっていた。
「わたしのが、先にここにいたのになぁ、退院は柏倉さんが、先かぁ・・」
「そうなっちゃったね」
よく話していた人が退院って何度かあったけどそれって、俺もなんだか、寂しいものだった。
「ま、でも通院で病院来た時には、立ち寄るからさ」
「約束ですよぉ、たまには寄ってくださいね、でも、直美さんは来なくなっちゃうなぁ・・」
「バイトが休みの日には直美と一緒に遊びに来るって・・」
「うん、約束ですからね、直美さんにもお願いしようっと」
また 夕子の顔に笑顔が戻って安心していた。
「あのう、聞いてもいいですか・・」
「勉強以外なら、いいけど」
紅茶の缶を口にしながら夕子に聞かれていた。
「どうやったら、ずーっと 仲良く付き合えるんですかぁ・・」
「はぁ・・・」
ちょっと困っていた。
「長いじゃないですかぁ、直美さんと柏倉さんって、・・・3年とかでしょ」
「うーん、年数って難しいんだよね、どこが最初だか、よくわかんないし・・」
「でも、長いですよね、仲いいし・・喧嘩とかしないでしょ」
「喧嘩かぁ・・意見の食い違いはあるけど。口をきかなくなるような事はなかったかなぁ」
あんまり、そんな事って考えたことなかったから自分でも思い出しながらだった。
「どうやって、彼と付き合っていけばいいのかなぁって思って」
「そんな事、考えたことないけど、俺」
「それって、本当ですかー ウソ言ってませんか・・」
「いやー ないよー ほんとに」
首を横にして、納得いかないって顔だった。
「では、聞き方変えますから・・うーんと、努力とかしてないですか、付き合う上で・・」
「努力かぁ・・それもあんまり考えたことないなぁ・・でも、思ってることでいいなら・・」
「なんですかぁ それって」
「うーん、今、夕子ちゃんって、この前俺が見た男の子好きなんでしょ、その気持ちが続くかどうかと、夕子ちゃん自身が、あの彼が好きな今のままの素敵な夕子ちゃんでいられるかどうかだけかな。 夕子ちゃんは 今の彼を大好きなわけでしょ。でも、それって、1ヶ月先とか1年先とかさ、彼が今の彼じゃなくなってるかもしれないよね。それで、夕子ちゃんが彼を嫌いになっちゃうかもしれないよね、それは仕方ないことじゃないのかなぁ。でもさ 夕子ちゃん自身がね、今のままで、ずっと素敵に年齢重ねていければさ、彼はきっとずっーと夕子ちゃんの事を好きなんじゃないかなぁ・・」
「うーん、素敵なままってところが・・」
「いや、そのまま変わらずにって事かなぁ・・夕子ちゃんらしく今のままでいいってことよ、変に相手に合わせようなんて考えたり、相手の事をあんまり考えすぎても疲れちゃうよ」
「そうなのかなぁ・・」
「相手の事を大好きって気持ちがあればそれだけでいいんじゃないかなぁ・・」
「柏倉さんて、そうなんですよね、それって」
「うん。たまにね、直美を見て、昔と変わらずに好きなのかなぁって考える時あるけど、大好きみたいだよ、俺って」
なんか、言わなくてもいいことまで言わされていた。
「私らしくってむずかしいなぁ・・わかんないや・・」
「あっ 言ってる俺も どういうのが俺らしいのか、あんまりわかってないから・・・」
「えっー なにそれー」
すこし笑っているような怒ってるような夕子だった。
「でも、好きなんだから いいじゃん、それで。夕子もいっぱい彼を好きなら、それでいいんだってば・・・好きなんでしょ」
「はぃ 大好きですよー」
「その 気持ちで接すればいいんだって・・いろんな事考えないでいいって」
「好きで いられるといいなぁ ずーっと」
「好きでいられるって、相手に感謝なんだよぉ、そこを覚えておいてね」
「そっかぁ 直美さんにですね 柏倉さんは・・」
「そうだよー 感謝してるよ」
恥ずかしかったけど、仕方なかった。
「夕子も、相手に感謝されるように、それで、夕子も相手を感謝するようにね」
うなずいている夕子を見ながら、なんだか、自分にも言い聞かせていた。
「さ、帰ろうかぁ、なんだか変な話しちゃったなぁ」
松葉杖を手にとってだった。
「聞いてよかったです。明日は直美さんにも聞いちゃおうかな・・」
「えっー うーん ま、いいかぁ でも今の話はするなよー」
「内緒にしてあげますって」
なんだか、高校生にからかわれていた。