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彼女こそは最終兵器

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 大通りを外れて裏道を行って、右に曲がって地下へ続く階段を下りてしばらく行って地上に上がって左に曲がってそこからさらに二つ目の路地を――――、
「めんどくさいなおい! ホントに道合ってんのか!?」
「まーまーシドーちゃん。名店というものは得てして隠れた場所にあるもんだぜい」
 そしてさらに上下左右に道を進むと暖簾が見えてきた。
 ドアはなく、暖簾のみが店の内部と外部を分けている。
 そして、青い暖簾にはこう書かれている。

『元祖スキヤキ』と。
「……いきなり店の名前からしてあり得ないんだが」
 もはやどうツッコめばいいのか分からなくなった仙崎の肩に、淡嶋は手を回しつつ言う。
「あーダイジョブダイジョブ。単にこの店の店主が『寿司』って漢字が書けなくて、代わりに同じく日本料理の代表格である『スキヤキ』を書いただけだから。ちゃんと寿司屋だよーん」
「なんで『寿司』が書けないやつが寿司屋やってんだよ」
「ダイジョブ。味はヒジョーにベリグーな感じだし、その上他では食べられないネタを出してくれるしな」
「カリフォルニア巻きとかか?」
「いや、異星魚握り」
「は?」
 とっつげきー、と淡嶋は暖簾をめくる。

 その瞬間。
「ラッシャイ、マセー」

 と意外な声が飛んできた。
 別にカタカナ発音が意外だったというわけではない。
 飛んできた声が異様に高いというか、幼いというか、ぶっちゃけ小学生女児ぐらいの声だったからだ。
 そして直後に意外な、というより論外な光景が目に飛び込んできた。
 店内が床壁天井テーブル椅子にいたるまで、青色で統一されていたからではない(色彩心理学的にまずそうではあるが)。
 夕飯のかきいれどきのはずなのに客が皆無ということではない(問題と言えば問題だが)。
 さっきの声の主がエプロンと鉢巻きを装備した、桃色の髪色で座敷わらしみたいな髪型の幼女だということでもない(これもかなり由々しき事態ではあるが)。
 淡嶋は回転寿司だと言っていた。
 仙崎の記憶では回転寿司は、今も昔も変わることなくレーンの上に手頃なお値段のお寿司が乗っかって来るという庶民の味方である。
 ここも確かに回転寿司だろう。
 ただ。

 空中を飛びまわる寿司ってなんだ?

「俺っちも初めて来たときはびっくりしたぜい」
 まるで海中の回遊魚さながらに、空中を縦横無尽に飛びまわる透明な皿に乗った寿司たちに目を奪われている仙崎に、淡嶋がポツリと言う。
 確かにびっくりする光景だ。
「まさか……寿司屋の店主がこんな可愛らしい幼女だったなんて!!」
「よし、お前の感覚がいつも通りおかしいことはよくわかった。そしてそんなことは割とどうでもいい。今お前が説明すべきは地球の重力に反抗しているこのお寿司革命軍についてだ。いったい何がお寿司を駆り立ててるんだ」
 この非現実的な光景を前にして、なおもいつもの調子を保つ淡嶋に呆れつつも仙崎は説明を求める。
 と、横から、というか下から横槍が入った。
「イラッシャイ、オキャクサン。オフタリサマ、デ、ヨロシイデ、ショッカー」
 なんにしてもショッカーはよろしくねえだろ、と仙崎が心の中でツッコミを入れると、淡島が満面の笑みで店主の方を向く。
「店主さーん。俺っちの事覚えてるー? 開店初日に来た淡嶋クンでーす」
「キノウ、キタ、ユイイツノ、オキャクサン、ワスレルワケナイヨ」
「昨日開店したばっかかよ! そして開店初日の客こいつだけかよ!」
「yes」
「英語の発音はできるのかよ!」
 と入口で騒いでいると、仙崎の肩にいきなり背後から手が置かれた。
作品名:彼女こそは最終兵器 作家名:一一