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彼女こそは最終兵器

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 二人の少年が高層ビルが乱立している町を移動している。かたや近年では絶滅危惧種とさえ言われているごくごく日本人的な黒髪の少年。かたや空前絶後という言葉が思い浮かぶほど奇抜な髪をした少年。双方ともに真逆の意味で浮いている。
 そんな事実など気にもせず町を行く仙崎と淡嶋だったが。

「だからね! 俺っちが思うに、やっぱり全てのおっぱいに共通するポイントは『流れ』というわけよ! ジャンプするときの上下の『流れ』に寝転んだときの左右の『流れ』。大きい小さい色々あっても結局の所『流れ』ってのは大切なわけよ! 聞いてるシドーちゃん!?」
「ああ、聞いてるから可及的速やかに口を閉じろ。ついでに鼻もつまんでくれ」
「死ねと!? 長年の友人である俺っちに呼吸困難で死ねと仰るのシドーちゃん!」
「どう考えても三ケ月は長年じゃねえだろ」
 仙崎が本気で呆れているのを感じ取ったのか、淡嶋は違う話題を提示する。

「じゃあ女の子のくびれのラインを二次関数のグラフに見立てた場合の身長と体重と体脂肪率を表す公式について……」
「学会に発表しろ。そんなバカみたいな公式は絶対に未発表だ」
 シドーちゃんがそっけねー! と嘆く淡嶋。これで相当頭が良いというのだから仙崎は神様の才能の配分に呆れてしまう。
「で? どこいきたいのシドーちゃん。アレよ? 俺っちどこでも案内出来ちゃうよ」
 そう、今日はそれが目的なのだ。
 入学式の日、淡島は三か月前に地方から上京してきた仙崎に向かって『はっはっはー! それじゃーこの町の自称帝王とさえ言われているこの淡嶋サマが町を案内してあげちゃおう!』と大言壮語したのが、結局なんやかんや慌ただしくて行けなかったため、三カ月経った今日まで延期されていたのである。
 見た目こそアレな感じだが意外と責任感やらは人並みにある淡島は、今日のプランを授業時間を削って(断じて怠けていたわけではない)考えていたのだ。
 しかし、仙崎からしてみれば、

「別にいい」
「ノー!? シドーちゃんそりゃないって! ようやく時間ができたっていうのにさー!」
「いや、だって。この辺の地理もう大体覚えたし」
 ぶっちゃけこの三か月の間に町の構造をある程度、淡島に聞くまでもなく理解してしまったのだ。
 しかしそんなことでは納得しない自称帝王サマである。
「じゃー機械魚水族館は?」
「行った」
「じゃー総合スポーツセンターは!?」
「行った」
「じゃー西交番は!? あそこ昔よく行ったから俺っちむちゃ詳しーよ」
「なんで警察のお世話になってんだお前」
 そんならそんなら、と次から次へと場所を言っていく淡島だが『行った』の一言で返されてしまう。
 挙げ句にむぎゃー! とよくわからない絶叫をした後、頭を抱えてしまった。
「もーヤダ、シドーちゃんキライ」
「そうか。それは残念だ」
 むくれているのか明後日の方向を向いたまま仙崎の方を見ようともしない淡嶋。呆れたように仙崎は肩をすくめるとぽつりと一言。
「腹減ったな」
「……」
 ピクリと淡嶋の耳が動く。
「家に帰って一人で飯食うのもあれだし。今日は外で食いてーな」
 ガバリッ! と淡島が振り向く。
 そして開口一番。
「それならこの淡嶋動縁のちょーオススメランキングベストテンから本日一押しのお店を紹介するぜいっ!!」
 そんな感じで、非常にわかりやすい男・淡嶋動縁とよくわからない男・仙崎志道は一軒の回転寿司に向かう事となった。
作品名:彼女こそは最終兵器 作家名:一一