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日出づる国

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 冬籠り前のクマはたっぷりとえさを食べ、栄養が体にゆきわたっているので脂肪分が豊富で、多くの恵みを与えてくれる。また、雪が積もれば足跡をたどって追跡がしやすい。
 煙で穴ぐらを燻して、出てきたところを倒すのだ。
 槍で突いていたが、失敗すると、猛り狂ったクマはヒトを襲うようになる。
 この土地には弓矢を作る材料が豊富にあった。弓矢の改良を重ね、今では離れた位置からでもクマを倒すことができるようになった。黒い石(黒曜石)からは鋭い刃先を持つナイフや鏃(やじり)を作ることができたからだ。

 ヌ族のリーダー・ヨシの後を継ぐのは娘のヨシカである。婿のムオ、息子のムキとヨシの母ヨウを含めた長老と呼ばれる人々、そして屈強の男たち数人を交えて邑の在り方や狩りなどについて、ヨシの呪術の力を得て協議を重ねていく。

 雪が積もれば、クマを狩りに出かける。いくつもの山を越え、山の中を駆け巡り、クマを追跡する。携帯したわずかのドングリの粉とウサギなどの小動物を狩って食料とする。

 クマは木の根元近くに穴を掘ってひと冬のねぐらを作る。木の根の放つエネルギーと雪の布団に覆われたねぐらは暖かい。そしてこの間に出産と子育てをする。
 時々外に出て木の皮や枯れ草の根を食べ、排泄をする。
 
 ムオ、ムキを含めた7人の男たちはドングリの粉を固めて作っただんごとウサギの干し肉を携えて、雪の積もる山へ入って行った。4匹の犬を連れて。
 クマの毛皮をまとい、足にはキツネやウサギの毛皮で作ったものを履き、足裏には木のつるを巻きつけて凍った斜面を上り下りした。雪が深い所では、木で作ったかんじき様の物を足裏に付ければ沈みにくい。そういったことを、ここ数年の経験から体得していった。

 各自が背負っている草で編んだ籠の中には、葦で作った多くの矢に交じって、黒曜石とケヤキで作った矢が1・2本あった。竹とその繊維から作った弦の弓、そして槍も持っていた。ウサギやキツネやライチョウには葦の矢を使う。放浪していた頃に使っていたマンモスの皮を天幕とした。
作品名:日出づる国 作家名:健忘真実