日出づる国
ヨシたち一族は、果てしなく広がる海を見て呆然と立ち尽くしていた。
今までに嗅いだことのないにおい、口に含んだ水は岩塩と似た味がした。
追い求めてきた太陽は、海のかなたにある。
海からの強い風がからだを舐め、包み込むようにして吹き抜けていった。
「さて・・・だれか風の当たらぬところを探して来い。当分ここにとどまることになろう」
ヨシが指示を与えると、数人の男たちが四方に散った。ムキもイヌを連れて駆けた。
残った者たちは、音を立てて押し寄せては引いていく、塩味のする水を持つ池とはどういうものかを調べて回った。
彼女たちの立つ位置は砂の上である。少し歩けば、岩山にぶつかって白く砕け散る波が見えた。
「このような塩水の中に、生き物はいるのだろうか・・・」
「ヨシ、これ見て、ほらかたつむり」
「これはシジミに似ているよ、だいぶ大きいけど」
「見て見て、魚がいる!」
膝まで水の中に浸かっていたヨシカが叫んだ。
「どうやら食べ物はいっぱいありそうだ」
海から丘をひとつ回ったところに草原を見つけて、遅れてやって来るはずのいくつかの族を待つことにした。
あくまで太陽を手に入れるために、朝陽の昇る方角に向かって氷の大地を行く族と、安定した生活を求めて、大きな木や草が茂っているのが見えている方角へ向かう族とに分かれた。
ヨシが率いるヌ族とネオが婿入りしたノン族は安定した生活を求めて南に、ヨシの婿ムオがいたイ族は太陽を求めて旅を続けることにして北へと向かうため、ここで別れた。
岩手県宮古市のあたりである。