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日出づる国

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 10年が過ぎた。
 ヨシがヨウに代わってヌ族を率いていた。ヨシを慕って加わった遠縁の者を含めて総勢71人にもなっていた。ヨシとムオとの間に子供は5人。
 
 彼らの旅路に、仲間から外れて怪我をしたオオカミが加わった。つかず離れず付いてくるオオカミは、腹に子を宿しているらしい。人間の近くにいることで食べ物にありつけることができることを知ったようだ。
 まもなくオオカミはヌ族が定着している近くの岩陰で、3匹の子供を産んだ。
 
 9歳となったヨシの息子ムキが、食べ物をもって母オオカミのそばへ行った。威嚇して寄せ付けなかった母オオカミは、よほどお腹を空かせていたのだろう、ムキが差し出した肉の塊をくわえ取って飲み込んだ。 それ以降徐々に威嚇することがなくなり、触れられても抵抗しなくなっていった。
 だが、母オオカミは衰弱が激しかったのか、息絶えた。その少し前、母オオカミは澄んだ目をムキに向け、ムキに何かを語りかけているかのように見つめていた。

 ムキは、生後2カ月となる3匹の子オオカミをテントに連れ帰った。
 妹の8歳になるヨシカと6歳のヨンとムキが1匹ずつ世話をすることになった。いずれも『イヌ』と名付けた。
 イヌたちは人の簡単な言葉と、そしてお互い、ボディランゲージで意思を伝え合うことを学んだ。イヌの優れた嗅覚と聴覚、速く走り、軽やかな身のこなしを利用して、狩りと見張り、水の確保、また闇夜での行動も可能とした。
作品名:日出づる国 作家名:健忘真実