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日出づる国

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 足の速いネオはいつも追い立て役である。仲間のマンモスを穴のある方向とは反対側へ追いやり、狙った獲物を穴に向かって追い落とすには左に右に、俊敏に動きまわらねばならない。

 いくつもの族からは婿として望まれていた。
 同じ一族の中に年頃の男女が複数存在しても、彼らは血縁関係にある。恋情が育つことはない。野生に近い彼らの本能は近縁を避け、性ホルモンは忌避しあう。
 腕の立つ狩人は離したくないが、血脈を多く残すことも大切な営みである。

 一方、ヨシには複数の族から婿候補が現れた。この場合、ヨシの気持ちが尊重されるのだが、たいていは候補者の狩りの力が試されることになる。
 4人の候補者は、朔の日から満月の間にひとりで猟をし、その成果によって選ばれる。
 大きい獲物や数が多い、ということではない。15日間をひとりで旅し、期限を守って帰って来るということに意義がある。生活能力、方向感覚、獣と渡り合う勇気などが試されるわけだ。
 クマやマンモス、トラ、オオカミなどと出くわすことが多い。
 最終的にはヨシが選択することになるのだが。

 キツネ3匹とウサギ4匹を持ち帰ったイ族のムオが選ばれた。それらをヨシは受け入れ、ムオは今後ヌ族として旅を共にすることとなる。  まもなく訪れる寒さに、キツネやウサギの毛皮は女性たちの羨望の的であり、その女ごころをうまくついたことがムオに勝利をもたらした。が、やはりキツネやウサギの習性をよく知った上でわなを仕掛け、違えずに帰って来る星座の知識も必要とされる。
 時には、帰って来ることのできない者もいた。


 マンモスの皮はテントや衣類・水汲み用容器となり、牙は武器や刃物に加工する。肉や内臓などすべての部位は保存食とする。
 血は直ちにすすり、特に肝臓は功労者から順に切り取って、生のまま食すのである。
 マンモスに限らず、狩り獲ったすべての獲物は同様に処置された。
 皮をはぎ、牙を切り落とし、細断した肉片は皮で包んで、担いだり引きずって仲間の待つキャンプ地へと戻った。

 婿として望まれたネオは何も持参する必要はなく、自身が所持する武器とマンモスの牙をもってノン族に加わった。
 代わりにムオが加わったヌ族は、再び朝陽が昇る方位を目指して旅を再開した。

 イ族とノン族も数日遅れて、東を目指して出立した。
作品名:日出づる国 作家名:健忘真実