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日出づる国

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 ヌ一族は、東へ向かう動物を追って旅を続けていた。
 動物には水が存在する方向を知る能力が備わっている。あるいは嗅覚によるものかもしれないが。
 動物たちは、砂漠となった地帯を抜け出て、草原で繁殖し生活をしていたが、数が増えてくると食べ物を求めて移動せざるを得ない。
 人にも同じことがいえた。
 人々は、朝、陽が昇る方角に希望を見ていたのかもしれない。
 いや、あの太陽を捕まえて自分たちの思うがままに大地を照らそう、と考えていたのか。
 朝陽なら手が届く、と。


 ヌ一族のリーダーは、ヨウという名の女性であった。総勢36人を率いて差配していた。

 12歳以上の成人男子は、大型の獲物を追って狩りに行く。ひと月以上も留守になることがあり、キャンプ地では、ヨウがすべてを決定しなければならない。飢えた獣が襲ってくることもあり、ヨウ達成人女性は怯むことなく果敢に立ち向かっていったのである。
 生きていくために、男女の別なく幼少のころより狩りの技術や植物の知識、動物の習性、生活の技術や道具の製作などをたたき込まれてきた。
 男たちが狩りに出ている間は定着して、川が近くにあれば魚をとり、小動物を狩り、草の根やイモ類を採集し、保存食にするのが残っている者たちの仕事であった。

 出産や育児は女性だけにしかできない仕事である。
 自然、女性たちの意見が重視されるようになった。また、女性たちは情報収集の能力にもたけていた。言語はさほど発達していなかったが、他の一族ともスムーズにコミュニケーションが諮れたからである。
 ヨウは7人の子供を産んだが、生きているのは3人である。
 14歳になるネオは、9人のメンバーのひとりとして狩りに出ていた。
 ヨシは年頃の12歳である。7歳のヨカと女の子はふたり。女性が多い一族は栄える、といわれていた。
作品名:日出づる国 作家名:健忘真実