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妖怪の杜

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シンドローム(5)




ブワッと墨色の物体は3本爪で東狐に襲い掛かる。
辛うじて、かわしたものの右眼下に横一文字に血が滴る…
ワッ、だ、大丈夫?

こ、こらぁ孟知何やってんの、あんた傅役(ふやく)でしょう。
役に立たないなら、お仕置きとして尻尾の毛全部むしり取るわよ。

私の思考を感じとったのか、それとも今の状況を汲み取ったのか。

孟知は敵と見做した物体に飛び掛かる…
空中で淡い光を放ち孟知の体は徐々に大きくなっていった…

虎程の大きさになった時、犬のようでもあり猫のようでもある獣へと変化した。

その姿は普段の三毛猫の孟知と違い琥珀色に輝き、
額には陰陽魚太極図が浮き上がり、
筋肉の絞まった体に立派な尻尾が2本ふさふさと揺れていた。

再び襲い来る3本爪をグシュっと食いちぎり、ペッと吐き出す。
フローリングの床にゴトリと落ちた爪は不思議な事に壊れた傘と何かの金属が融合した物だった。
墨色の物体は「グぁう」と呻くと…窓を打ち破り外へと逃走した。
「申し訳ありません。主殿。私の失態で貴方様を傷付けてしまい…」
きらびやかな琥珀色の尻尾をたなびかせ反省する孟知。

「いや、大丈夫さ。達也が無事ならそれでいいよ。それより、この騒ぎ…元の姿に戻って」
「ハッ、畏まりました」
そう、言って元の三毛猫へと戻る孟知。

この騒ぎで、ようやく目を覚ます達也君。
そして、バタバタと二階に駆け上がる達也君の両親。
部屋の様子を見てア然とする。
「誰かの悪戯みたい」と金属を指差し東狐が言い訳する。
冷静な状態であれば、割れたガラス片で投げ入れたものかそうでないかは理解出来たはずだろうけど…


作品名:妖怪の杜 作家名:槐妖