妖怪の杜
シンドローム(1)
東狐が出掛けて30分ぐらいたったかな?
達也君家にそろそろ着く頃だし…
やっぱ見守る事が母としての努めだよね、京吾。
私は東狐のベッドに座り意識を集中する…
あっ、居た。
しゃきしゃき歩きなっての、東狐っ。
「なあ、孟知。達也病院に容れられちゃうかな…」
これこれ、ちょっとそこまで~な犬の散歩かよ。
ビーサンぺたぺたでだらし無く歩く我が子と飼い猫。
久城という表札がかがげられた家の前で東狐達は立ち止まり、
インターフォンを1回押した。
達也君の家だ。
(はい、どなた)
「あっ、東狐です。達也君居ますか」
(あら、トーコちゃん。達也居るわよ、入って)
達也君のお母さんの甲高い声を合図に家に招かれた二人…
ん?一人と一匹だね。
「お邪魔します」
「いらっしゃい、トーコちゃん。達也二階に居るから。達也~トーコちゃん来たよ」
(ハ~イ、あがってもらって~)
二階から達也君の声が響いた。
東狐は大人用のスリッパに履き変えると二階へと目を向ける。
「って事だから、勝手にあがっちゃって、後でおやつ持ってくから」
甲高い声の達也ママ、にっこり笑い。なぜか上機嫌な感じで…
トトッとお台所へと向かったみたい。
東狐は、その姿を見送った後…やれやれの表情。
なんか生意気!
二階へあがった我が子は達也君の部屋の前で大人スリッパのせいでこけまずく…
フフッ、ザマアみろ。
「た、達也。入るよ」
取り繕ってやんの…笑える。
「どうぞ」
中からの声と同時にドアを開けた。
達也君を目にした東狐は驚く。
想っていた以上に達也君の状態は酷かった。
両手両足、顔、見える部位はほとんどが包帯や絆創膏で覆われていたのだ。