かい<上>ただひたすら母にさぶらう
「そんなこと、せーへんわっ!」(済んだことを、何をグタグタ言うてんねん!)と、言わんばかりの顔をしている。毎日、気をつけているつもりだが、マンネリの落とし穴、母はお金の区別をするような、そんな俗世とは無縁の人であることを、うかりとした、私の失態だ。
「わーっ!叔父さんこんなとこにもあったわー!」お金、その(2)
2005/4/22(金) 午後 1:00
某月某日 昨日給料日とボーナスの支給日であった。母にそれらを見せ。
「お袋ちゃん、今日はな~、ボーナスも出たんやでぇ、これや、見てみっ!」
「わー!、ほんとう、にいちゃん、がんばったからなっ!」母も笑顔を見せる。
「お供えしとくわな!」
「うん、ちゃんと、しときや~」翌日、何気なく仏壇を見ると、ボーナス袋がない。
「お袋ちゃん、仏壇に、お供えしたボーナスしらんか~」
「しらんよ~、どうしたん?ないんか~」
「うん、昨日、お供えしたんやけど、あれへんねん」
「ふ~ん、どないしたんやろな~」午後、姪が、夕食の用意とお掃除に来てくれた。私は、母の居室に入り、箪笥、衣装ケースや仏壇の小抽出し、などを捜し始めた。
「叔父さん何してんっ!」と、母の居室をうろつく私を見とがめて、姪が。
「うん、ボーナスがな、失くなってん」
「わー、えらいこっちゃんかー」と、姪が大声を挙げる。
「00(姪)も、ちょっと探すの手伝うて~や」と、姪に声をかけ。
「分かった、え~とお婆ちゃんの手の届く範囲やから~」と、姪も心得ている。こうして、姪と二人で、母の居室を探すことおよそ半時間。
「ど~や、00見つかったかー!」と、姪に声を掛けた。
「見てみぃー叔父さんこれだけあったでぇ~」と、姪がティシュの束を4~5個私に差し出した。
「一つ一つちょっと開けてみぃ」
「分かった、ひやーっ、叔父さん、00万円もあったわっ!」
「僕も、これだけあったわ」
「叔父さん、まだあるでー!」と、姪はなんだか面白そうに。
「そうやな、もうちょっとあるはずやから~」私と姪のやり取りや、不審?、な行動に母は面白くないのか、ちょっとヘソを曲げたらしい様子で。
「なにしてんのっ!、ふたりでー、ゴソゴソとー!」案の定だ。
「うん、お袋ちゃんは心配せんでもえ~よ、ちょっと探しものしてんねん」
「なに、さがしてんの~?」
「大事なもんや~」
「わたしもさがそうか~」と、母が。
「え~よ、もうだいたい見つかったから、00(姪)に手伝うてもろたから大丈夫やっ!」
「そうか、それやったら、え~えけどなっ!」と悠然としている母。その母に、夕飯を出さなければならない時間だ。また、あとで探そうか、と思ったその時。
「わーっ!叔父さんこんなとこにもあったわー!」と姪が感心したような甲高い声をあげた。その場所は、母の敷き布団の下であった。
「だまってあがってきて、モノもいえへんし、はらたつねん!」誰でしょうか?その(1)
2005/4/26(火) 午後 1:29
某月某日 母は頑として、、、。母が言うには「廊下に、どこかの白髪のお婆さんと白い服を着た子供が、勝手に上がりこんで、遊んでいる」と主張するのだ。
私が、廊下とリビングの間仕切りになっているドアを開けて。
「お袋ちゃん、見てみぃ~な~、誰もいてへんで、ほ~ら、」と、言うと。
「さっき、そこに、おったわー!、にいちゃんがあけたから、にげたんやわー!」と、こうなのである。
「僕、玄関から入ってきたけど、お婆さんも、子供も、おれへんかったで~」
「わたしは、いつもみてんねん、ふたりであそんでんのん!」と、腹立たしそうに言う母。
「そやかて、おれへんで~」
「そやから、ゆうてるやろーっ、あんたが、きたから、どこかにかくれたんや!、それもわからんのーっ!」
「そんなこと、ないと思うけどな~」と、母には聞こえないように呟いたつもりだが。母は、憤然として怒りだした。(やっぱり、地獄耳の母だ、聞こえていたのだ)。
「あんたわっ!、みてないから、そういうことゆーうねん、わたしは、いつもみてるから、わかってっんねん!」
「そやけど、その二人、なんで、お袋ちゃんが居てるときだけ、来るんかな~」真っ向勝負を避ける私。
「わたしをな~、としよりやおもうてバカにしてんのやっ!」成る程、母の言う事は筋が通っている。
「そんなこと、ないと思うけどな~、それより、お袋ちゃんな~、そんな、変な、二人が入って来てやで~、遊びだけで、お袋ちゃんには、何か、悪さ、せ~へんのかあ」
「わるいことは、せ~へんねん、そこで(母は廊下を指差し)、わたしが、とおられへんようにしてんねん!」
「そんなこと、するん!」思わず、私も母に同調した(えーっ俺どうしたんかなー)。
「そ~やねん、にいちゃん、なんとか、おいだして~なー」
「何も、悪いことせ~へんかったら、遊ばしといたったら、どう~や」
「だまってあがってきて、モノもいえへんしぃ、はらたつねんっ!」この話、母が止めるまで、終わらないのだ。
「こわいっ?、なんでこわいのん?」誰でしょうか?、その(2)
2005/4/27(水) 午後 0:56
某月某日 夕食後、私は竹で目釘抜き(刀剣に使用する道具)を作り始めた。母はテレビのCMが面白いのか。
「にいちゃんみてみ、はっははは~っ!」と、満面の笑み。ほんとに可愛らしい笑顔である。その直後、母の声のトーンが変わった。
「またきてるぅー、ほんまにぃーっ!」と母が、リビングと廊下のドアを睨みつけながら、私に訴える。
「どうしたんな~、お袋ちゃん?」私は、竹細工用の小刀を置いて、母に声をかけた。
「また、きてんねんでぇー、おばあさんとあのコがっ!」
「廊下の向こうにいてるんか?、何してるのん?」
「ふたりでな~こっちみて、こそこそ、なにかしらんけど、はなしてるわー!」
「お袋ちゃん、聞こえてんのんか~?」
「うん、ハッキリせ~へんけど、きこえてるぅ!」
「そうか~、あんな狭い廊下で、何話してるんかな~」
「わからん?、そやけど、ずぅ~と、わたしをみてんねんでぇ!」
「お袋ちゃん、気のせいちゃうか~」取りあえず、言ってみた。
「なにゆーてのん、みてみぃーな、あそこに、おるやんかー!、あんた、みえへんの?、なさけないっ!」(可哀想なやつやなー)と言わんばかりに母が私を見る。
「うっう~ん、、、、、、」(私には見えない、修行が足りないのか)。
「ほんだら、ちょっと見て来たろうか?」
「うん、にいちゃん、はよいって、みてきてぇ、もうきたら、あかんでぇ、ゆ~て、ゆ~ときやっ!」
「分かった、言う~たるわ」私は、ドアを開け、廊下の中ほどまで行き。
「もう遅いから帰ってちょ~だい、うちの、お袋ちゃんなあ、怒ったら怖いよ~、早よ、帰りぃー!」と、誰もいない?、廊下の向こうに向かって叫んだ。
「でていったかー、にいちゃん!」と母の声。
「うん、帰ったわ!」
「もう、きたら、あかんゆ~てくれたかぁー」
作品名:かい<上>ただひたすら母にさぶらう 作家名:かいごさぶらい