パンドラの鍵
どうして、なんのために。その事実は早苗を恐怖のどん底に陥れた。
早苗は死に物狂いでその部屋から抜け出すと、踊り場にある階段を
手すりにしがみつきながら下り始めた。
あんな小さい子が殺されたのなら、奥様は……。
そこまで考えて、早苗はうなじにぞくりと悪寒が這い上がるのを感
じた。
「どうか、どうか無事でいて!」
早苗の脳裏に、地獄のようなシーンがぐるぐると回り続けている。
早苗は足下を見下ろした。
階段は地獄の底へと早苗をいざなっているようだった。
死への入り口……。
早苗は階段を転がり落ちるように下りると、奥様の姿を捜し続けた。
どうして、どうしてこんなことに。
だが、いくら答えを探し求めたところで、答えなど見つかるわけが
ないのだった。
ただ、雅弘君は殺されたという事実だけが、早苗の身に重くのしか
かってくる。
早苗はふと背後に人気を感じて後ろを振り返った。
そこには……、一瞬心臓が止まりそうになる。