パンドラの鍵
一体どう説明すればいい、どうしてこんなことに、早苗は自分の目
を疑った。
雅弘君は、雅弘君は……
悪魔に魂を抜き取られていた。
ごろりと早苗の足下に転がり落ちてきたもの。
それが全てを物語っていた。
床に生暖かいぬめぬめしたものが広がっていく。
「あ、あぁぁぁ―――」
早苗の前にいたのは、頭のなくなった胴体……。
切れた首からはどくどくと真っ赤な血が勢いよく吹き出していた。
それは早苗に全体重を預けてきた。
早苗の白いブラウスが、みるみるうちに赤く染まっていく。
早苗は青ざめた唇をわなわなと震わせた。
そして怖々とその遺体を突き放すと、座ったままずるずると後ずさ
った。
「誰か――、お願い誰か――」
助けを求める早苗の声は掠れて、ほとんど聞き取れないほどだった。
なんてこと、まだ七歳にも満たない雅弘君が何者かによって殺され
た。
それも頭を切断するという残酷なやり口で……。